米ハーバード・ビジネススクールでマイケル・ポーター博士に師事し、早くから社会課題の解決と経済活動を両立させるCSV(Creating Shared Value)経営を提唱してきた名和高司氏。近年では従来のSDGs(持続可能な開発目標)の限界を超える経営モデルとして、“志”を持ちながらデジタルとグローバルを意識する「新SDGs」を提起する。今後企業は、差し迫った課題であるSDGs、さらにその先の新SDGsに対し、どのように向き合えばよいのかを聞いた。

名和 高司(なわ たかし)氏
写真/陶山 勉
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名和 高司(なわ たかし)氏
一橋大学ビジネススクール国際企業戦略専攻客員教授
1957年熊本県生まれ。80年東京大学法学部卒業後、米ハーバード・ビジネススクールにてMBA取得。三菱商事を経て、91年マッキンゼー・アンド・カンパニー入社。2010年から現職。ファーストリテイリング、味の素、 NECキャピタルソリューションズ、SOMPOホールディングスの社外取締役を現任。近著に『経営変革大全』(日本経済新聞出版)、『パーパス経営』(東洋経済新報社)など。

SDGsやESG(環境・社会・ガバナンス)に対する取り組みが、大企業、中小企業ともに求められるようになってきました。こうした流れにはどのような背景があるのでしょうか。

 まず、1981年~95年に生まれたミレニアル世代、90年代後半以降に生まれたZ世代やα世代などを中心に、世の中の正しい流れに対する感度の高い人が増えてきたことが挙げられます。彼らが日常的に使用しているSNS(交流サイト)が世界的に大きな影響力を持ったことで、個人や組織の良い活動が多くの人から評価され、共有されるようになりました。加えて近年、黒人に対する人種差別に反対するブラック・ライブズ・マター(BLM)やセクシャルハラスメントなどに抗議する「#MeToo」などの社会運動が、SNSを通じてグローバルに受発信されるようになったこともこうした傾向に拍車をか掛けています。

 企業も例外ではありません。SNSを通して企業活動への共感が広がると業績に好影響を、反発されると悪影響を受けることになります。多くの人が重視している環境や社会、人権、ダイバーシティーなどに配慮しない企業は、痛烈な批判を受けることを経営者は常に意識する必要があります。

 こうした流れは、新型コロナウイルスの感染拡大によってさらに強まっています。自分さえ感染しなければよいのではなく、社会全体で感染防止に努めなければなりません。こうした意識の広がりも、他人や企業の行動に対する感度を高める要因です。

日本の経営者の中には、降って湧いたようなSDGsや社会の動きに消極的な人もいるようですが。

 経営者は今や「環境や社会に配慮しない企業は生きる資格がない」という自覚を持たなくてはなりません。昔と違い今の若い世代にとっては、資源をリサイクルしたり、二酸化炭素の排出量を減らしたりすることがクールであり、無駄に消費することは格好悪いと考えています。リッチになったり有名になったりすることよりも、周りのために何かをすることに存在意義を感じる人々が増えているのです。そのようなスタイルで行動する人が、SNSで多くの支持者を集めて、インフルエンサーになっています。この価値観の変化は大きいと思います。