社会課題よりも原点・思い・志を優先

では、企業はどのような姿勢でSDGsに取り組んだらいいのでしょうか。

 重要な点は「社会課題の解決から入ると間違える」ということです。大企業でも中小企業でも同じことが言えます。そもそも社会課題に取り組んでも、ほとんどもうかりません。だからこそその課題は未解決のまま残されているのです。

 目先の社会課題に飛びつく前に、まず「自分たちが本当にやりたいことは何なのか」を改めて見つめ直すことが大切です。「本当にやりたいこと」は、「創業の思い」や「起業の原点」「志=パーパス」に置き換えても構いません。ほとんどの企業は、単にもうけることや事業を長く続けることだけを目指して活動しているのではなく、何らかの価値を社会に提供したいという思いから出発したはずです。この原点にある思いに立ち返るのです。

名和 高司(なわ たかし)氏
[画像のクリックで拡大表示]

 創業者が抱いていた志は、大企業よりも中堅・中小企業のほうが社内で共有しやすいはずです。総合商社はじめ、コングロマリット化してしまった大企業は、仕事の内容が多様なこともあり、従業員の意識がバラバラになりやすい面があります。一方、中堅・中小企業は、比較的少数の事業を展開しているので、創業の原点が共有しやすく、ブレません。競合に勝たなければならない、マーケットシェアを獲得しなければならない……といった目先の競争を超えて、自分たちが何をしたいのか、世の中にどのような影響を与えたいのかを突き詰めることが大切です。

国連が定めたSDGsには17の目標があります。これらの目標と企業としてやりたいことが重ならない場合はどうしたらよいのでしょうか。

 SDGsには2つの種類があって、1つは世の中から後ろ指を指されないための「守りのSDGs」です。今の時代、労働環境や自然環境を考慮しないでは、ビジネスは継続できません。これは企業なら最低限守るべきルールのようなものです。

 それに対して、私が強調したいのは「攻めのSDGs」です。すなわち、自分たちがもっと成長したい、世の中に価値を提供したいといった志を持ち、独自の視点で社会課題を発見し、解決に貢献することです。中堅・中小企業の存在意義は、独自性にあります。他社も使うSDGsの17の目標から選ぶと、自社ならではの良さを発揮できず、思いや志を見誤ってしまうでしょう。