サステナビリティの目標設定はバックキャスティングで

では、取引先から再エネ100%で製品を作るよう求められたら、具体的にどうすればよいのでしょうか。

 日本の再エネ電力は海外に比べてコスト高です。急ぎの対応としては、非化石証書、Jクレジットなどのカーボンクレジットで対応したり、再エネ電力の安い海外企業からのオファーに切り替えたりすることが考えられます。しかし、それだけでは十分ではないでしょう。

 前述したように、国内の状況も方向が変わりつつあります。今般のエネルギー基本計画も再エネが主要電源であると明記されました。また、北海道石狩市のように、石狩湾新港地域に再エネエリアを作って地産エネルギー活用に取り組んだり、宮城県東松島市のように、各企業と組んで再エネに対するバリューチェーンを構築したりする自治体が出てきました。

 この動きはこれから加速するでしょう。21年6月、「地域脱炭素ロードマップ」が内閣府から発表され、30年までに少なくとも100カ所の脱炭素先行地域を創出する目標が掲げられました。これに、地域や自治体、地銀などが強い関心を寄せています。

 言い換えれば、再エネ利用に関して、中小企業が個社で考えて解決することではありません。契約先や自治体などのパートナーと一緒に考えていけばいいのです。巻き込むためには、ESGやSDGs経営の将来シナリオは自ら描かなければなりません。

吉高 まり(よしたか まり)氏
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ESGやSDGsのシナリオを描く際の注意点はありますか。

 ESG投資家は、再エネ100%にすぐにでも切り替えることを要求しているのではありません。求めているのは、トランジション(移行)の明示です。日本政府が50年にカーボンニュートラルと言っているのなら、あるいは30年がSDGsのゴール達成期限であるのなら、その時企業は、どのような存在になっているのか、そのストーリーを描き、どのような道筋で取り組むのか。これを指し示すことが重要なのです。

 このトランジションを作成する際に、注意が必要です。中長期経営計画を策定する場合、多くの経営者は、現在から延長して数年後に確実にできる必達目標を考え、それをベースに未来に何ができるかという、現在から未来に向けてのフォアキャスティングで考えると思います。しかし、サステナビリティを目標にする場合、社会のマイルストーンを考慮し、将来の自分たちのあるべき姿を設定し、そこから段階ごとに何をしたらいいのかを、現在に向かって設定するという、バックキャスティングで考えるべきなのです。これは必達目標ではなく企業のWill(意志)です。フォアキャスティングとバックキャスティングシナリオをいかに近づけていくかの経営手腕が問われます。

 サステナビリティのために自社が何をしたらいいのか迷うかもしれません。しかし、すでにやっている事業がSDGsのどの目標に当てはまるかを考え、次に社会が今、何を求めているかを考える、という手順で進めるとハードルが低くなります。なお、SDGsの17の目標別に、参画し得る各分野と市場規模の試算が示されています(以下のグラフ参照)。これに当てはめれば、より具体的な計画を描けると思います。

SDGsの各目標の市場規模試算結果(2017年)
SDGs各市場規模予想
「SDGs(Sustainable Development Goals)関連ビジネスの世界市場規模を目標ごとに約70~800兆円と試算」(2018年4月23日、デロイトトーマツ、 https://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/about-deloitte/articles/news-releases/nr20180423.html )
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