世界の国々が温暖化ガスの排出量と吸収量が差し引きでゼロになる「カーボンニュートラル」あるいは「ネットゼロ」(ゼロエミッション)を強化している。「2050年までに達成」など、目標年を盛り込んだ具体的な宣言をし始めた。一方、ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー危機やコロナ禍で、脱炭素政策にも影響が出ている。こうした流れの中で、企業は脱炭素にどのように取り組むべきなのか。脱炭素や気候変動の動向に詳しい東京大学の高村ゆかり教授に聞いた。

髙村 ゆかり(たかむら ゆかり)氏 東京大学未来ビジョン研究センター教授
写真/陶山 勉
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高村 ゆかり(たかむら ゆかり)氏
東京大学未来ビジョン研究センター教授
島根県生まれ。京都大学法学部卒業。一橋大学大学院法学研究科博士課程単位修得退学。龍谷大学教授、名古屋大学大学院教授などを経て、2019年4月から現職。専門は国際法学・環境法学。中央環境審議会会長、東京都環境審議会会長、再生可能エネルギー買取制度調達価格等算定委員会委員長、アジア開発銀行の気候変動と持続可能な発展に関する諮問グループ委員、国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)評議員なども務める。

コロナ禍の前後で、国内外における脱炭素への取り組みはどのように変化したのでしょうか。

 脱炭素社会に向けての世界の具体的な動きは、2015年12月採択のパリ協定に始まりますが、当初は先進的な国や国際機関、企業などの取り組みが中心で、全体ではそれほど活発とは言えませんでした。その後、SDGsやESGの機運が高まり、20年10月、日本でも「2050年カーボンニュートラル」を宣言したように、ここ数年、特にコロナ禍以降の2年ほどでがぜん、拍車がかかってきたのです。

 コロナ禍によってDX(デジタルトランスフォーメーション)が加速したとよくいわれます。環境分野でも、技術革新による次世代エネルギーへの転換を通じて、温暖化ガス排出量増加などの環境問題を解決し、持続可能な社会を実現させるGX(グリーントランスフォーメーション)が急拡大しています。

 コロナ禍の21年11月、気候変動について話し合う国際会議COP26(第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議)が英グラスゴーで開催されました。この開催に向けて、各国、各業界、団体などが脱炭素の目標達成を前倒しするなどの発表がありました。日本は21年4月に米国で開かれた気候変動サミットにおいて、温暖化ガス削減目標を当初の26%から46%に引き上げると宣言しました。

 さらに、直近では、22年5月開催の主要7カ国(G7)気候・エネルギー・環境相会合で温暖化ガスの排出削減対策が行われていない石炭火力発電を「段階的に廃止する目標に向け、適時かつ具体的措置を取る」との共同声明が採択されました。