海外の優秀な若者を日本に呼び寄せる

アフターコロナにおいて日本企業がイノベーションを生み出し、新しい事業を立ち上げるには何が必要でしょうか。

出口 治明(でぐち はるあき)氏 立命館アジア太平洋大学(APU) 学長
写真/陶山 勉
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 やはりダイバーシティでしょう。多様な人が混ざると組織は強くなります。そしてイノベーションが起きます。ラグビー・ワールドカップの日本チームがいい例でしょう。具体的には、海外の学生を日本に呼び寄せて、起業してもらうのが近道です。日本の人口は、20年1月時点で昨年より50万人減りました。大分県で最も多い、大分市の人口がまるまる消えたことになります。そんな中で、優秀な海外の若者を数万~数十万人くらい呼び寄せても何も問題はないのではないでしょうか。コロナウイルスが持ち込まれることを心配する声が上がりそうですが、空港でPCR検査を実施して2週間宿泊施設に待機させれば問題ないでしょう。

 これは「新留学戦略」、あるいは「新ユニコーン戦略」ともいえます。米国のユニコーンの創業者には留学生や渡航者が大勢います。今、私たちはオンライン会議ソフト「Zoom」を頻繁に使っていますが、ソフトを開発した米Zoomビデオコミュニケーションズは、中国出身のエリック・ヤンという若者が1997年に27歳で渡米し、2011年に設立した会社です。

 20年6月、香港で国家安全維持法が施行され、若者を中心にした抗議活動の様子が報じられました。ところが香港の教育機関はとても充実しており、日本と比較しても優秀な若者や大学生が多いことはあまり知られていないようです。

 英国の高等教育専門誌・THEによる「アジア大学ランキング2020」では、トップ10のうち、香港の大学が3校も入っています。トップは前年に続き中国の清華大学、日本は7位の東京大学だけです。ほかにも、15歳を対象としたOECD(経済協力開発機構)による学習到達度調査(PISA)でも、香港は日本を抜いておおむねトップ3に位置しています。それを意識してか、英国のボリス・ジョンソン首相は、香港市民に対し英国の市民権を与えると宣言しました。これには、人道的な理由だけではなく、「英国に来て働いてほしい」というメッセージが込められています。

 幸いなことに、日本は新型コロナウイルス感染者数や死亡者数を欧米よりも少なく抑えることに成功しています。経済的なダメージも比較的小規模です。20年8月に発表された第1四半期のGDP速報値を基にした年率換算で日本は28.1%減ですが、ユーロ圏は40.3%減、英国は59.8%減、米国は32.9%減でした。香港市民や学生にとって、日本は英国や米国よりも仕事や勉強の環境として魅力的に映るはずです。

 外国人を受け入れるだけではなく、日本の若者にもどんどん海外に進出してほしい。企業は課税に対してシビアですから、政府が留学に要する企業の経費を全て税額控除すれば、積極的に社員を留学させるのではないでしょうか。未来を担う若者を世界中から呼び寄せ、日本の若者を広い世界に飛び立たせる。そしてワクワクドキドキする社会をつくっていくことが日本再生の鍵となるはずです。

立命館アジア太平洋大学では、アジア地域を中心に多くの留学生が学んでいる(写真提供/立命館アジア太平洋大学)
立命館アジア太平洋大学では、アジア地域を中心に多くの留学生が学んでいる(写真提供/立命館アジア太平洋大学)
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文・構成/寺島 豊

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