近年、スポーツは大きな求心力を持つようになっている。東京オリンピック・パラリンピックは、スポーツの持つそうした力を再認識する契機になった。しかしここ数年、コロナ危機や少子高齢化など、スポーツを取り巻く環境は変わっている。長年、スポーツをビジネスの視点から研究してきた大阪体育大学学長の原田宗彦氏に、ポストコロナにおける企業とスポーツの関係を聞いた。

原田 宗彦(はらだ むねひこ)氏 大阪体育大学学長
写真/陶山 勉
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原田 宗彦(はらだ むねひこ)氏
大阪体育大学学長
米ペンシルベニア州立大学健康・体育・レクリエーション学部博士課程修了(Ph.D.)。鹿屋体育大学助手、フルブライト上級研究員(米テキサスA&M大学)、大阪体育大学大学院教授などを経て、2005年、早稲田大学スポーツ科学学術院教授、21年4月から現職。一般社団法人日本スポーツツーリズム推進機構代表理事、日本スポーツマネジメント学会会長などを歴任。

新型コロナウイルス感染拡大や東京オリンピック・パラリンピックを経て、スポーツに対する意識、そして企業とスポーツの関係はどのように変化してきたのでしょうか。

 コロナ禍によって、多くの企業でテレワークを導入し、これまで以上に健康やウェルビーイングに対する関心が高まっています。同時に、人々の中で生活の場を都会から地域へとシフトする動きが見られます。また、SDGs(持続可能な開発目標)や気候変動、脱炭素といった社会課題がクローズアップされることも人々の意識に大きな影響を与えています。

 このような世の中の流れを受けて、企業とスポーツの関係も当然変わってきます。これまで企業は、主に広告宣伝という側面からスポーツに関わってきましたが、今後は、地球環境問題や社会課題へのメッセージをスポーツに求めるようになると考えています。そのようなメッセージを打ち出した競技やスポーツイベントに企業などの協賛が多く集まるようになると思います。

 すなわち、企業はスポーツに関連する事業を展開し、地球環境や地域社会に貢献していく。これがポストコロナ、ポスト五輪における企業とスポーツの関係だと言えます。

スポーツで、地球環境や地域社会に貢献するにはどのような方法があるのでしょうか。

 米アマゾンの取り組みが知られています。2020年6月、アマゾンはシアトルにあるスポーツ・アリーナの命名権を取得し、「アマゾン・アリーナ」ではなく「Climate Pledge Arena(気候誓約アリーナ)」と命名しました。この命名には、気候変動への対策が必要であることを、常に想起させる狙いがあります。

 この競技場は、バスケットボールやホッケーの試合などが開催される予定で、廃棄物を発生させないかたちで運営し、太陽光パネルによる発電システムや雨水を再利用する製氷システムも導入することが計画されています。アマゾンにとって、アリーナ運営事業を展開しつつ、自社の気候問題へ取り組む姿勢をアピールできるわけです。

 オリンピックについてもこれまで以上に地球環境と地域への取り組みが求められます。そして開催都市はそれを意識する必要があります。

 札幌市は2030年冬季五輪の招致を考えているのですが、新型コロナウイルスへの感染対策や予算が拡大する問題、レガシーの活用などが懸念され、従来のやり方だと8割近くが招致に反対するのではないかという見方があります。この問題について相談されたので、私は「Climate Friendly Olympic(気候に悪影響を及ぼさないオリンピック)にしましょう」と提案しました。

 雪は気候変動の影響を大きく受けるので、強いメッセージになります。例えば、施設運営で排出される二酸化炭素の量をできるだけ削減することで、公的機関の認証を受けられる施設にする、あるいは、SDGsの1つである「住み続けられるまちづくり」に関連づけて、スポーツを中心に置いた街づくりで誰もがアクティブに生活ができる環境を整えるといった施策が考えられます。