パーパスはロジカルではなくデザイン思考で

これから取り組む企業の場合、パーパスをどのようにつくればいいのでしょうか。

 パーパスを策定するプロセスは、①自組織の探索、②社会の探索、③統合と言語化、④具現化、の4ステップに分けられます。①と②で自社と社会の要素を抽出した後の③統合という作業が特に重要です。この作業でのキーワードとなるのが「デザイン思考」です。

 日本の場合、デザインという言葉から意匠を思い浮かべることが多いのですが、他の国では、デザインを、ビジネスデザインやサービスデザインなども含めて理解しています。私も含めたビジネスデザイナーはビジネスとデザインの世界を行ったり来たりしています。そうした活動を通して、社会課題の解決と企業の成長を両立させるシナリオをつくるには、デザイン思考がふさわしいと考えるようになりました。

 自社の目指すことと社会からの要求がずれていたり、一部で矛盾したりすることは珍しくありません。このようなケースで、事業をロジカルシンキングの手法、すなわち、物事を体系的に整理して筋道を立て、矛盾なく考える思考法で進めていくと、社会課題と企業の成長を両立する発想が生まれにくいでしょう。一方、デザイン思考では、枠の外、例えばまだ理解できていない「兆し」のようなものに着目し、異なる要素を結合して、新しい概念を創造していきます。実際の作業としては、泥臭くステークホルダーとの対話を繰り返し、ワイガヤ、膝詰めといった形で根気よく進めていきます。「混沌を楽しむ」中で道を見つけていく作業とも言えます。ただし、大切なのは、パーパスを決めることではなく、実践することです。

岩崎 博論(いわさき ひろのり)氏 武蔵野美術大学クリエイティブイノベーション学科教授
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中小企業でもパーパス経営は可能でしょうか。

 日本には長寿企業が多いといわれており、そのほとんどは中小企業です。長寿企業の特徴でもある「三方善し」の経営は、パーパスと高い親和性があります。同族経営の場合、ステークホルダーとの関係をこれまでも重視してきたはずです。また大手企業に資本もブランド力でも劣る中小企業にとって、パーパスで多くの人の支持を得ることが大きな力となります。

 従業員をつなぎ留めるという意味でもパーパスは重要な役割を果たします。コロナ危機によって働き方が見直され、この会社で働くとはどういうことか、自分の仕事は社会を良くしているだろうか、などと疑問を抱く人が増えたのではないでしょうか。企業がパーパスを提示することで、従業員に安心を与えられるのです。

文・構成/寺島 豊

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