オンラインを知の探索に活用

コロナ禍によって仕事の多くがオンライン環境になり、現場や対面での機会が減ってくれば知の探索がやりにくくなるのではないでしょうか。

 これには個人差があります。人と直接会えなくなってコミュニケーションがやりにくくなったという人もいれば、若い世代を中心に、オンラインによって人脈を広げやすくなったという人もいます。むしろ、オンラインは、時間や距離の制約を受けず、多くの人とつながれます。対面の場合に比べて、オンラインの場合、目的が明確で無駄な話もしないので、短時間に終わる傾向があります。そのためミーティングの数をこなせるので、うまく活用すれば出会いの機会も増えます。

入山 章栄(いりやま・あきえ)氏 早稲田大学大学院経営管理研究科(ビジネススクール)教授
写真/陶山 勉
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 宮崎県に外食事業を展開する一平ホールディングス(宮崎市)という企業があります。同社の村岡浩司社長に「オンライン環境によって新規開拓ができなくなっているでは」と聞いたら「全然そんなことはない」との答えでした。従来であれば、キーパーソンに会うのに時間がかかったり、いくつかのステップを踏まなければならなかったりしました。現在のリモート環境では、キーパーソンをよく知っている人を経由すれば、これまでよりも簡単に商談の機会をつくれるそうです。このように、やる気があってコミュニケーション力がある人は、オンラインでも十分に人脈を広げられるのです。

 会議では本題が終わった後の雑談から良いアイデアが生まれたりすることがあります。オンラインミーティングの場合、そうした雑談が生まれにくいという問題があります。この問題も雑談の時間を意図的に設けることでクリアできます。オンラインでも「ここで本題は終わりですが、ご意見をお聞きしたいことがあるので10分ほどいただけませんか」と持ち出せばいいのです。例えば、コンサルティング会社のフィラメント(大阪市)は、フルリモートワークで雑談が激減したことを危惧して、週1回、オンラインによる「公式雑談タイム」を設けています。何を話してもよいのですが、社外のゲストを呼ぶこともあるそうです。こうした雑談から新たな企画が生まれ、人脈が広がっています。

DXは多くの企業にとって今後の課題だと思います。人工知能(AI)を活用して、イノベーションの効率を高めることは可能でしょうか。

 イノベーションに必要な知の深化は、同じことを繰り返し、改善し、磨き込み、収益化することなので、AIが得意とする分野です。もう一方の知の探索は人間だからこそ可能な作業です。DXの進展によって、知の深化を一部、AIに任せて、人間は知の探索に専念するようにすることが大切です。

 中小企業は、DXやAIのための予算を確保するのが難しいという意見があるかもしれません。最近は、比較的安価に利用できる業務改善型SaaS(サービスとしてのソフトウエア)が増えています。こうしたサービスも活用して、知の深化から知の探索へと従業員のマインドチェンジを促すこともイノベーションを起こすうえで重要になるでしょう。

文・構成/寺島 豊

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