営業チームの育成に役立つとして話題の2冊の書籍『無敗営業 「3つの質問」と「4つの力」』『無敗営業 チーム戦略 オンラインとリアル ハイブリッドで勝つ』。その著者である高橋浩一氏が、書籍の内容をさらに深掘りし、経験の浅い営業担当者を成長させ業績を伸ばすために必要になるノウハウを解説する。連載第4回は、顧客の「不協和状態」を解消して受注を勝ち取る方法を紹介します。

相手の真意を見極める
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 第3回では、しつこく質問をしても、お客様はそれほど怒るわけではない。それなのに、多くの営業担当者は「関係を悪化させてしまうのでは」と思い込んで、なかなか質問ができない。そんな現状について解説しました。

 「激怒されるまで質問する」というのは、頭では分かっていても、それを実践するのには勇気が要ると思います。経験の浅い若手営業担当者ならなおさらです。そこで、今回は「お客様が商品やサービスを買うと決める場面」に焦点を当てて、若手をどのように指導したらよいかを考えます。

 「お客様が商品やサービスを買うと決める場面」については、

・もともと、どの商品・サービスを買うか決めており、多少のことでは心変わりがしない状況
・どの商品・サービスを買うかはまだはっきりとは決めておらず、ある程度の判断材料を基に考える状況

 の2通りが考えられます。

 例えば前者のケース。すでに長年の付き合いがある会社に対して継続して発注しており、満足度も高く、他の会社に発注を切り替えることがかなりの手数を伴う場合、こうしたお客様へのアプローチはなかなか難易度が高いと言えるでしょう。

 このような場合は、他社からの切り替えを狙うにしても、いきなり逆転受注を目指して勝負を仕掛けるより、コンタクトを続けつつ、チャンスをうかがうのが得策かもしれません。

 一方で、後者の「どの商品・サービスを買うかははっきりとは決めておらず、ある程度の判断材料を基に考える」状態にあるお客様は、提案活動の良さによっては十分、受注が狙えます。

見極めて、質の高いアプローチを

 大事なことは、このような状態にあるお客様に対して、質の高いアプローチをすることです。「まだ決めていない」お客様に対して効果的な提案をするためには、「悩む」お客様の心理を考えることが必要です。

 このようなケースでは、お客様から見たときに、複数の会社が発注候補として上がっていても、容易に決められません。複数の選択肢があり、どちらを採用するか決めるのが難しい、ということもあるでしょう。

 心理学の話になりますが、人間は自分の持っている複数の情報の間に矛盾が生じている場合、その矛盾について自身を正当化するかたちで低減、もしくは解消しようとする性質があります。これを「認知的不協和」と言います。矛盾している状態自体を「不協和」というわけです。

迷いの心理は「認知的不協和」
迷いの心理は「認知的不協和」
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 営業における「認知的不協和」とはどういうことなのか。具体的に考えていきましょう。

 例えば、ご自身が経営者だとして、ある会社にこれまで発注していたが、他の会社からも提案を受けていて、その新しい提案もまんざらではない状況を考えてみてください。こういうときは、「新しい会社の提案は魅力的だが怖い」と「得意先は改善の余地ありだがリスクが低い」とで迷っているわけです。

 しかし、お客様はそのままの状態ではいられません。両方の選択肢を同時に取ることはできませんから、矛盾、すなわち不協和が生じているのです。お客様はこの不協和な状態に耐えることができません。

 お客様にとって安易な選択肢は、「新しい会社の提案内容を得意先にそれとなく漏らして、安心できる得意先に発注するか。まだ人間関係のない新規先の方が断りやすいし、理由を付けて断っておこう」となります。そうすると、「新しい会社の提案は魅力的だが怖い」と「得意先は改善の余地ありだがリスクが低い」とで迷っていたお客様の不協和状態が解消されます。