不協和状態を解消する

 この「不協和状態が解消される」というのは、「言い訳が見つかって楽になる」という状態とも言えます。楽になるというのは、自分の選択や判断は間違っていないぞと、正当化するわけです。「迷ったお客様は、つくりやすい理由や言いやすい理由を正当化し、言い訳しやすい人に言い訳する」というのはとりわけ重要です。要は、「断りやすい人に対して断る」のである、ということです。

 お客様の不協和を解消して、受注につなげられる営業方法を若手営業担当者にアドバイスすればよいのです。では営業の場面でどのような提案をすればよいのでしょうか。

 以前、私がある会社のトップ営業の方々に研修設計のためのヒアリングをしていたとき、こんなことがありました。

 業務用機器のメーカーから食品メーカーに転職されたトップ営業担当者にヒアリングさせていただいたときのことです。私が「業務用機器と食品とでは、扱う商材が違いすぎて、営業の成果を出すのが難しかったのでは」と聞いた質問に対して、すぐにその場で「いえ、そんなに違わないですよ」という答えが返ってきました。

顧客の利益は何ですか

 私が「どういうことですか」と聞くと、その方は「自分の会社が持つ製品はあくまでお客様にとっての“手段”です。その手段を使って、お客様にどう利益を上げていただくかというのが私の仕事であり、そういう意味では、業務用機器も食品も違いはありません。単純に、その利益を出していただくまでの筋道をどう描くかという話です」と即答されたのです。

 「筋道を描く」というのは、お客様から見たときにその会社になぜ発注するかが明確になること。それはどんな商品・サービスを扱うのであっても変わらないという言葉は、非常に強いインパクトでした。まさしく、「お客様がなぜ当社の提案を選ぶのか」を設計することで、不協和状態を解消しているわけです。これこそお客様の思考プロセスを追いかけた営業スタイルです。

 この「筋道を描く」とはどういうことか、次回に解説したいと思います。

(日経BP「日経ビジネスベーシック」連載記事を加筆・修正)

高橋 浩一(たかはし こういち)氏 TORiX 代表取締役
高橋 浩一(たかはし こういち)氏
TORiX 代表取締役
東京大学経済学部卒。外資系コンサルティング会社に勤務後、25歳のときにアルーの創業へ役員として参画。 同社の事業部長、取締役副社長として、事業起ち上げや営業の組織づくりに従事。実績も経験もない状態から、多数の一部上場企業を取引先として新規開拓。さらに、毎年新入社員を採用・育成して戦力化する仕組みをつくり上げる。創業時3人から6年で社員70人まで組織を成長させた経験を基に、現在はスタートアップ支援も行う。2011年にTORiXを設立、代表取締役に就任。これまで、50業種以上、3万人以上の営業指導に携わる。コンサルティングは年間800件、登壇は200回以上。日経ビジネス課長塾“THE営業力”でもメイン講師を務める。19年10月、コンペで8年間無敗の経験を基に『無敗営業 「3つの質問」と「4つの力」』(日経BP)を出版 。発売半年強で4万部のベストセラーに。最新刊に『無敗営業 チーム戦略』(日経BP)がある。
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