具体化する4つの手法
まず、「具体化質問」とは相手が答えやすくするための質問です。以下の4つの手法に分類でき、それぞれ状況に応じて使い分けます。
・条件付き拡大質問
・選択肢付き限定質問
・限定質問
「拡大質問」は、相手に自由に答えさせる質問です。「御社の課題について、あなたはどのようにお考えですか?」など、制約条件を付けず、また選択肢を絞ることなく、お客様にざっくばらんに話してもらうのが、これに当たります。実は、先ほど挙げた質問例のうち、「お客様は何に困っていらっしゃるのでしょうか?」「予算はいくらぐらいでしょうか?」といった質問も、この「拡大質問」に該当します。
こうした問いかけの仕方では、必ずしも思い通りの答えは期待できないかもしれませんが、商談の糸口を探り当てるヒントが見つかる可能性があります。また、「次回はどのようなキャンペーンがよいと思いますか?」など、お客様の考えやアイデアを幅広くお聞きするときにも使えます。
もう少し踏み込んで聞いてみる手法が、「条件付き拡大質問」です。こちらは、一定の制約条件を設けた上で自由に答えていただく質問です。例えば、「御社の課題について、特にここ1カ月の間で議論されているテーマは、どのような内容でしょうか?」という具合です。「1カ月の間」という時間的な制約条件を付けています。他にも、メンバーや場所など様々な制約条件が考えられます。「拡大質問」より、相手に対して「考える視点」を投げかけて尋ねるため、具体的な答えが得られやすくなります。
3つ目の「選択肢付き限定質問」は、「例示」で選択肢を示すことで、回答範囲をある程度絞る質問です。具体例としては、「御社の課題はどのような感じでしょうか? 例えば ビジョンの提示、管理職層のリーダーシップ、戦略など。ほかにも何かあれば……」というように、選択肢を提示したうえでお客様に選んでいただく質問です。うまく選択肢が設定できれば、お客様からの回答は明確になります。
最後の「限定質問」は、回答範囲を限定した質問です。具体例としては、「これまでお伺いしたお話から、御社の課題は○○○○○○○だと感じましたが、合っていますか?」といった形です。冒頭の質問例「(競合がすでに入り込んでいるとき)後からコンタクトした当社にチャンスはありますか?」というのも「限定質問」です。お客様は、多くの場合、「はい」か「いいえ」で答える質問となります。あらかじめ答えをいただけそうな感触があるのでしたら、回答を迫る「限定質問」は効果的です。
ここまで紹介してきた「具体化質問」の4つの手法を駆使すると、お客様に対して、こちらが知りたいことを具体的な内容に落とし込んでいくことができます。
状況によって、ズバリ聞き出す
「具体化質問」を使っていくことで、お客様からの回答はよりクリアになっていきます。しかし、まだお客様と踏み込んだ話ができていない場合、お客様の考えがいまひとつはっきりせず、多く質問する必要が出てくることも起こります。ただし、あまりに何回も質問を繰り返していると、“尋問”のようになって、お客様の気分を害しかねません。
そのようなときは、細かい質問を重ねるより、ダイレクトに重要なポイントを突くような大胆な問いかけが有効です。それが「核心質問」となります。「核心質問」とは、そもそもの部分を聞き出す質問です。ビジョンや目標、達成するための手段や方法について問いかけると、その後に相手が「困ったこと」「悩み」を言い出しやすくなります。
ビジョンや目標を明確にする質問の例として、以下のようなものがあります。
・そもそも、なぜそういう目標が設定されたのでしょうか?
・その目標は、ずっと前から立てられていたのですか? それとも最近なのでしょうか?
・そのビジョン実現に対して、今のところ“うまくいっていること”“思うように進まないこと”としてどのようなものがありますか?
手段や方法を明確にする質問としては、以下のような例があります。
・なぜ、(1年後などの未来ではなく)今のタイミングなのでしょうか?
・そのまま自社内で進められるのではまずいのでしょうか?
・なぜ、現在すでに実行されている方法だと不十分なのでしょうか?
このような質問をすることで、お客様から「困ったこと」や「悩み」を聞き出せれば、課題を共有できます。お客様の課題を明確にし、よりよい提案につなげましょう。
3回にわたって、「質問力」の4つのステップを説明してきました。これは、基本です。「質問力」をさらに高めて、よりよい提案を実現するための応用テクニックである「課題発見質問」について、次回から解説します。
(日経BP「日経ビジネスベーシック」連載記事を加筆・修正)

TORiX 代表取締役
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