価値には4パターンある

 価値は、お客様の感じ方によって、大きく4パターンに分けることができます。縦軸に「うれしい、心が動く」という情緒価値、横軸に「便利だ、有益である」という機能価値を取ります。情緒価値と機能価値ともに低いのが「労務提供」、情緒価値は低くても機能価値は高いのが「情報提供」、情緒価値は高いが機能価値は低いのが「想い・共感」、情緒価値と機能価値ともに高いのが「提案・提言」です。

「価値」の4パターン
「価値」の4パターン
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(1)労務提供

 最も簡単です。これは、いわばお客様の仕事を肩代わりするということ。資料を作成する、何かを調べておく、物理的なお手伝いをする(店舗の整理など)、社内の人の話を聞くといった作業が挙げられます。「何かの作業を代わりに負う」のは、相手としても特段の理由がない限り、差し障りのない範囲でやってもらえれば助かることですし、またこちらとしても申し出がしやすい価値です。しかし、自分の時間はどんどん奪われてしまいます。

(2)情報提供

 「こんな情報、ご存じですか?」といった形で、自分の時間をそれほど割かずに価値を提供できる点が特徴です。手元の情報を複数のお客様に送ることもできますし、情報データベースを作って繰り返し利用することもできます。ただし、単に情報を送るだけでは、お客様が読まずに済ませてしまったり、お客様のニーズにそぐわなかったりするケースがあるのが悩ましいところです。情報提供だけでは限界が出てきます。

(3)想い・共感

 営業活動を進めようにも、人間関係や感情のつながりがまったくできていない状態ではうまくいきません。あらゆるプロセスにおいて、「お客様との関係ができているかどうか」が関わってきます。そのカギとなるのが、想い・共感です。例えば、趣味などでお客様との共通点を見つけて盛り上がる。一緒にいて楽しい、打ち解けているというように、“心の架け橋”を築くことで、仕事が円滑に進みます。こうした関係を「ラポール」と言います。もともとは心理学用語で、「親密な関係」や「信頼関係」を意味します。

(4)提案・提言

 お客様と心理的な距離を縮め、有益な情報を提供することから、一歩踏み込んだ状態です。「こんな事例がありますよ」「こんなニュースがありましたよ」「これを知っておくといいですよ」といった情報を送るだけでは、お客様にしてみればどう行動すればいいのか、どんな意思決定をすればいいのかなどは分かりません。「こういうふうにされたらどうですか」「こうしたらうまくいきますよ」とアドバイスをすることによって、「確かにその通りですね」「そうですね、やってみましょう」と響くお客様が出てきます。

 「提案・提言」が、価値訴求の在り方として非常に理想的です。こうしたお客様との付き合いができるようになると、価値訴求による営業活動の効果を実感できるでしょう。しかし、いきなりそこまではできませんので、ステップを踏んでいく必要があります。

 これら4つの価値訴求を状況によって使い分けることで、ワンランク上の営業活動を展開できます。これまで本連載の内容が、1件でも多くの受注を獲得するためのヒントになることを願っています。

(日経BP「日経ビジネスベーシック」連載記事を加筆・修正)

高橋 浩一(たかはし こういち)氏 TORiX 代表取締役
高橋 浩一(たかはし こういち)氏
TORiX 代表取締役
東京大学経済学部卒。外資系コンサルティング会社に勤務後、25歳のときにアルーの創業へ役員として参画。 同社の事業部長、取締役副社長として、事業起ち上げや営業の組織づくりに従事。実績も経験もない状態から、多数の一部上場企業を取引先として新規開拓。さらに、毎年新入社員を採用・育成して戦力化する仕組みをつくり上げる。創業時3人から6年で社員70人まで組織を成長させた経験を基に、現在はスタートアップ支援も行う。2011年にTORiXを設立、代表取締役に就任。これまで、50業種以上、3万人以上の営業指導に携わる。コンサルティングは年間800件、登壇は200回以上。日経ビジネス課長塾“THE営業力”でもメイン講師を務める。19年『無敗営業「3つの質問」と「4つの力」』、20年に続編となる『無敗営業 チーム戦略』(ともに日経BP)を出版 、シリーズ累計7万部突破。21年『なぜか声がかかる人の習慣』(日本経済新聞出版)、『気持ちよく人を動かす ~共感とロジックで合意を生み出すコミュニケーションの技術~』(クロスメディア・パブリッシング)を出版。年間200回以上の講演や研修に登壇する傍ら、「無敗営業オンラインサロン」を運営している。
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