顧客から見た「一味違う」営業の3タイプ

 お客様の目から見て、「この営業は、他の会社の営業とは一味違う」と感じるケースは大きく3タイプに分かれます。

 1つ目のタイプは、豪腕で押しが強く、自分の信じた言葉で語る「豪腕型」です。話の内容も良く、努力と実績を感じさせるので、お客様にとって「頼りになる」という感情を起こさせます。

 彼あるいは彼女は、お客様から断られるなど1ミリたりとも考えません。あふれんばかりの自信と熱意に基づいて、「どうだ」と言わんばかりの提案を出してきます。ただ、それはすさまじい努力と数々の実績によって支えられており、お客様からすると「断りづらい」雰囲気が漂っています。

 2つ目のタイプは、お客様へ徹底的に尽くす「奉仕型」です。奉仕型の営業はとにかく顧客志向が強く、常にお客様のことを考え、お客様の立場に立ち、お客様がしてくれたらありがたいと思うであろうことを実直に実行します。

 時には、自己犠牲が伴うこともありますが、「お客様へ徹底的に尽くす」営業の判断基準は、「それがお客様のためになっているかどうか」が全てです。お客様からすると、「この営業からの提案を断るのは申し訳ない」と感じるぐらいの感謝が生まれます。そうして、売り上げが積み重なっていきます。

 3つ目のタイプは、「お客様がある営業に発注するとはどういうことか」という視点から逆算的にアプローチする「戦略型」です。戦略型の営業は、(営業ではなく)お客様にとっての目的やミッションを達成するにはどうしたらよいか。そのためにはどのような選択肢が最適か。自社の提案はお客様にとって最適な選択肢になっているかといった観点から考え、行動します。

 営業側の都合を押し通すよりも、お客様の社内での意思決定ルートをきちんと描く方が大事であると理解し、お客様の声に耳を傾けます。そして、どうしたら自社の提案を通してもらえるかをヒアリングしながら、そのための要件をそろえていきます。トークのうまさよりも、お客様から「当社を選んでいただくための材料」をいかにして引き出すことの方が重要です。

顧客から見た「一味違う」営業の3タイプ
© TORiX Corporation. All Rights Reserved.

 私がコンサルティングや営業の現場でヒアリングを行うと、ハイパフォーマー営業はおおむねこの3つのタイプに分類されますが、豪腕型や奉仕型は、ご本人が決まって口にされる台詞があります。それは、「自分は当たり前のことをやっているだけなのですが。こんな当たり前のこと、何で皆がやらないのですかね」というものです。要するに、「当たり前にやっていることのレベルが高い」ことに対してご本人が無自覚で、それゆえに突出した水準に到達しているというわけです。

 この「当たり前のレベルが違いすぎる」という事実を無視して、豪腕型や奉仕型をまねしようとすると、挫折しやすくなります。

 「当たり前のことをとてつもないレベルでやる」というのは、一朝一夕にできることではないからです。

まねしやすい、再現しやすい戦略型営業

 経営者として営業を組織的に強化したいなら、「戦略型」に注目すべきです。戦略型営業は、その思考プロセスを客観化・言語化しやすいので、他の2タイプに比べて「他人がまねしやすく、再現しやすい」という特徴を備えているからです。

 戦略型にとって必要なのは、高度な論理思考力や難しい言葉を並べる力ではなく、「お客様はどのような目的やミッションを達成する必要があるのか」「お客様はどうやって発注先を選ぶのか」というプロセスや心理状況に対する理解です。お客様がある会社の営業をなぜ選ぶのか。どうやって選ぶのか。ここをしっかりと押さえていけば、社会人経験の少ない若手でも結果を出せる営業担当に成長させることができます。

 お客様が営業を選ぶ理由に焦点を当てて戦略型営業を育成するというアプローチについては、私が多種多様な営業組織に対して研修やコンサルティングを提供する中で、「特定の業種だけでなく、あらゆる業種やビジネスモデルに当てはまる、普遍的な法則ではないか」と思うに至りました。

 この連載では、「成果を上げる営業を育てるためには『顧客目線』が不可欠」をメッセージとして、エッセンスをお伝えしていきたいと思います。次回から、壁を突破していくためにどうするかを具体的に見ていきます。

(日経BP「日経ビジネスベーシック」連載記事を加筆・修正)

高橋 浩一(たかはし こういち)氏 TORiX 代表取締役
高橋 浩一(たかはし こういち)氏
TORiX 代表取締役
東京大学経済学部卒。外資系コンサルティング会社に勤務後、25歳のときにアルーの創業へ役員として参画。 同社の事業部長、取締役副社長として、事業起ち上げや営業の組織づくりに従事。実績も経験もない状態から、多数の一部上場企業を取引先として新規開拓。さらに、毎年新入社員を採用・育成して戦力化する仕組みをつくり上げる。創業時3人から6年で社員70人まで組織を成長させた経験を基に、現在はスタートアップ支援も行う。2011年にTORiXを設立、代表取締役に就任。これまで、50業種以上、3万人以上の営業指導に携わる。コンサルティングは年間800件、登壇は200回以上。日経ビジネス課長塾“THE営業力”でもメイン講師を務める。19年10月、コンペで8年間無敗の経験を基に『無敗営業 「3つの質問」と「4つの力」』(日経BP)を出版 。発売半年強で4万部のベストセラーに。最新刊に『無敗営業 チーム戦略』(日経BP)がある。
DeCom会員登録のご案内

会員登録された方に、メールマガジンで新着記事、新連載のご案内、その他ビジネスに役立つお得な情報を無料でお送りします。会員限定記事も今後続々登場する予定です。ぜひご登録ください。
DeCom会員登録はこちら