営業チームの育成に役立つとして話題の書籍『無敗営業 「3つの質問」と「4つの力」』。同書の著者、高橋浩一氏が、書籍の内容をさらに深掘りし、経験の浅い営業担当者を成長させ業績を伸ばすために必要になるノウハウを解説する。連載第2回は、質問を通してお客様の信頼を勝ち得る方法。

質問の仕方を変えてみる
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 本連載では、お客様が営業担当者を選ぶ「理由」に焦点を当てていきます。目指したいのは、営業チームのメンバーがみな、お客様から選ばれる理由について自分なりに考えながら、実際に確かめるプロセスを持つことです。

 お客様から選ばれる理由に焦点を当てたアプローチは、私自身が営業の素人から独立・起業して実際に法人営業を行い、日本の大手企業を次々にお客様として獲得し、かつ高い確率でリピートをいただくに至った過程を基に開発しています。しかし、それだけでは、よくある「売れている営業の経験談」で終わってしまうでしょう。

 「営業として、自分はこうやってうまくいったから、他の人もまねをすれば売れる」というロジックは、万人には当てはまりません。

 組織としての営業を強化したいなら、経営者は、自分の成功体験を若手営業担当者に押し付けるのではなく、「お客様の側から、世界はどう見えているのか」を考えるように指導しましょう。

 私は、自分自身が営業提案をするだけでなく、経営者として、自身の会社でも日々、色々な会社から提案を受け、購買判断の決裁を行っています。営業を受ける「お客様」の立場も、日常的に体験をしているのです。ハイパフォーマー営業としての個人の体験談を多くの人にそのまま当てはめるのは難しいですが、今回紹介するお客様が営業を選ぶ理由に焦点を当てるという発想は、経験の浅い営業担当者からベテランまで幅広く役立つと確信しています。

質問1つで印象が変わる

 私自身も、営業を始めたばかりの頃は、あまりにも売れなくて、貯金もどんどん減っていき、このままいったらどうしようと思い悩む日々でした。

 そんなとき、私の営業人生に大きな影響を与えるレベルの出来事が起こったのです。それは、友人から紹介された某生命保険会社の自称トップセールスマンにお会いしたことがきっかけでした。何かの参考になるかと、その方から保険の勧誘を受けてみたわけです。

 商談が始まった瞬間、その営業マンから変な質問をされました。このせりふは、今でも覚えています。

 最初に聞かれたことは、「高橋さん、あなたはずっと生きているわけではないですよね」という質問でした。

 私は当然、「はい」と答えます。続いて営業マンから次の質問。「あなたには、もしものことがあったら悲しむような大事な人はいますか」。

 これも、私は「はい、まだ親も健在ですし、家族がいます」と答えます。さらなる質問は「その大事な人が悲しむ場面を想像したら、胸が痛みませんか」。これに対しても、私は「はい、それは胸が痛みます」と答えざるを得ません。その時、何かが頭の中をよぎりました。そして、その営業マンの質問はこうきました。「では、その大事な人のために今からできることを、懐の痛まない範囲で検討してみませんか」。

 このせりふを聞いたときに、頭の中で何かが反応しました。

 「はい」と繰り返し答えていくうちに、気がつくと提案を受けるモードに入っていたのです。これまで、私は自分が訪問した先に対して、いくら頑張っても提案にまでたどり着けませんでした。しかし、まさに今自分の目の前で、初対面から数分のうちに提案にまでこぎ着けた営業担当者がいる。その彼の行動を見て、「これは、勝つやり方が行動としてインストールされている」と感じました。

 自分がこの人から学ぶこともできるはずだ。そう考えた私は、徹底的に彼のせりふや行動をメモし始めました。

 それまで試行錯誤しても得られなかった気づきが、「お客様の立場」を体験することによって、色々とつながっていったのです。

 そうして、翌日から新しい挑戦の日々が始まりました。

 自分がお会いした生命保険のトップセールスマンは、質問の仕方が巧みだったので、私自身の営業スタイルもそれまでの説明型・プレゼン型から質問型に切り替えてみました。実際、質問型に切り替えると、「どうやったら買ってもらえるのか」ということをより深く考えるようになります。

 「どうやったら買ってもらえるのか」の答えにたどりつくためには、営業プロセスをお客様の目線から考えて、突き詰めていかねばなりません。その日から、自分の話し方やノートの取り方を変えてみました。

 今までは深く考えずに自分の会社の商品やサービスの説明をしていたのが、1つひとつの行動について、少しずつ新しいやり方にスイッチしていったのです。

 いきなりその日から、お客様の反応が変わっていく感触がありました。

 それまでは初回訪問のときに、私は「御社の課題は何ですか。何かお悩みがありますか」と聞いていました。経営者なら経験から分かると思いますが、いきなり初めて会った営業マンに対して会社の深刻な悩みを話す大企業の担当者なんていません。「それほど困っていません」と追い返されるのがオチでした。