マナーを守り、丁寧な物腰を保つ

 実際にやってみてどうだったのか。結論からいうと、激怒するお客様はいらっしゃいませんでした。きちんとしたビジネスマナーや、人としての丁寧な物腰さえ示していれば、お客様としては「当社のことを理解しようという営業の姿勢に好感を持つ」ということが分かってきたのです。

 要するに、お客様のことを理解せずにずれたことを繰り返すから怒らせてしまうのであって、お客様のことを理解して貢献しよう、という姿勢さえ保っていれば、相手にとっては逆にありがたいのだということに気づきました。

 ご自分が経営者として取引先の営業担当者と面会するときを思い出してください。真摯な姿勢で質問する相手を好ましく思い、役に立つ情報を提供するのではないでしょうか。他社も同じです。自社の営業担当者に、そうした視点で指導すればよいのです。

 その後も、このアプローチを繰り返すうちに1件受注できました。受注後にすかさず、「他にも良い会社はあったと思うのですが、なぜ弊社に発注いただいたのでしょうか」と聞いてみました。「提案が良かったから」という答えが返ってきます。「でも、もう1社も、提案内容は良かったのでは」と、私は聞き返します。「まあそうですが、私たちの思いをくみ取ってくれるという姿勢があまり見えなかったんです」。そこで、さらに踏み込みます。「もう1社の営業が不誠実だったということですか」。ここまで聞くと、具体的な答えが返ってきます。

 「もう1社さんの営業も人柄としては誠実だとは思うのですが、営業のやり方は『自分たちの考え方が正しい』から始まっていて、弊社の事情をくみ取るということをあまりしていただけなかったんです。それに比べて御社は、かなり丁寧にヒアリングをしたうえで、一緒につくっていこうという姿勢で臨んでくださいました」

 このあたりで「なぜ、お客様は自分から商品やサービスを買うのか」を徹底的に掘り下げていけば、営業がうまくいくのでは、という感覚が確信に変わっていきました。迷った末に、お客様が営業を選ぶ最後の決め手は何なのか、とにかくここに焦点を当てるのです。

 その後は、行動量を増やせば増やすほど、結果がどんどん出るようになりました。アポイントも取れるし、コンペ(受注競争)でも勝てるようになってきたのです。経営者の方は、ご自分がどのような理由で発注を決めるかを改めて掘り下げてみてください。その内容を営業チーム内で共有すれば営業の成功率は確実にアップするはずです。

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