税理士の岩松正記氏が三菱UFJビジネススクエア「SQUET」で連載しているコラム『取引したい会社、したくない会社』から、人気記事を転載する。今回は、会社が大きくなれるか、なれないか。その違いは、経営者が「夢」を語れているかどうかに尽きる。夢を語れる社長だけが会社を成長させることができるのではないか、というお話。

夢を語り実現に向けて行動できる会社、夢を語れない会社
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友人がテレビに出演して語ったこと

 先日、10年来の友人である藤井牧場代表取締役の藤井雄一郎さんから、テレビに出演したという連絡がありました。フジテレビ系の「石橋、薪を焚(く)べる」という、とんねるずの石橋貴明さんが焚火を囲んでゲストと語り合う形式のトークバラエティ番組です。藤井さんに聞いたら、収録時にした話とは順序が違っていたが、きちんと編集され、放送された番組ではトークが理路整然と分かりやすくなっていた、とのことでした。石橋さんもすごくいい人だったらしいです。

 藤井さんは、北海道富良野市で牧場を経営されています。明治の北海道開拓時代から牧場をされている家で、彼で5代目。10年ほど前に私が東京の勉強会でご一緒した頃は乳牛700頭を飼っていると言っていたのが、今では1000頭を超えるほどに規模を拡大しています。会うたびに会社も体も大きくなっていく友人を見て、彼の事業意欲には頭が下がる思いです。藤井さんは番組の中で、「開拓者たれ」の経営理念の下、これまでやってきたことと、これから挑戦したいことを堂々と述べていました。

 ちなみに、藤井さんと一緒に通った勉強会には、世界的ベストセラー『人生がときめく片づけの魔法』著者の近藤麻理恵さんや、『年収1億円思考』著者の江上治さんも通っていました。

夢でもホラでも

 振り返ってみると、藤井さんは出会った当初から常に事業拡大の話をしていました。番組でも言っていた、効率のいい搾乳の方法や質の向上の話、海外進出の話、チーズやソフトクリームなど乳製品の製造販売の話。それは、ただの牧場主で終わりたくないという彼の強い思いからだったのかもしれません。私たちはそばで聞いていただけですが、今になって振り返ると、驚くべきことに彼はそれらをすべて実現しています。それら以外でも、学会で研究発表したり農林水産省の審議委員になったりもしており、2年前に家族で牧場を見学させてもらったときも、牛舎の拡大とそれに伴う人員確保の問題について熱く語る姿は大変魅力的でした。

 その一方で、彼と出会った頃とそれほど大きく事業規模が変わっていない自分を振り返ると、不甲斐なさを感じることしきりです。この大きな差、というか違いが出た原因は何かと考えてみれば、それは言うまでもなく、「夢」を語れていたかどうかに尽きるように思えます。藤井さんは常に、自分の事業の将来について夢を持ち、ああしたい、こうしたい、こうなりたいということを語っていました。言うなれば、目標があったということ。そして、それを具体化する計画をつくり、実行したというわけです。

 夢を語るということは、意外とできるようでできません。漠然とした目標を語ったとしても、それを実現する計画をつくる前に「どうせ無理だ」と自己否定してしまいがちです。また、計画をつくれても、つくるのが目的になって全く実行できない場合も多々あります。いずれにしても、計画の前提となるゴール、すなわち「夢」を語れるかどうか。有名な話ですが、孫正義氏は創業直後に社員2人の前でこの会社の売り上げを1兆円、2兆円と数えられる会社にする、と言ったそうです。今だから孫社長の武勇伝になっていますが、その時点では「夢」どころか「ホラ」と言っても過言ではなかったでしょう。しかし、そのホラすら語れない人に「夢」を語ることは無理な話です。