地道な努力を惜しまない

 ビジネスに限らずあらゆる物事において、成功している人はやはり、それなりに努力をしています。ラクしてもうけている人など決しておらず、皆一様に他人の想像も及ばないところで汗水たらして創意工夫しています。そして、努力を惜しまない人ほど、意外と自分のノウハウを簡単に公開しています。その理由は簡単、「誰にも真似できないから」なのです。

 つけ麺の生みの親として有名な故・山岸一雄氏が昔、業界誌に自身のラーメン・つけ麺のレシピを公開したことがあるそうです。それがあまりに微に入り細をうがった細かいもので、その通りにやれば本店とまったく同じ味ができてしまうものだったらしく、お店で修業した弟子たちは山岸氏に抗議したとのこと。しかし山岸氏は、「大丈夫。その通りやる人などいないから」と取り合わなかったそうです。実際、レシピを公開してもお店の売り上げには何の影響もなかったとか。また、たった1人だけ、レシピ通り作って商売がうまく行ったと山岸氏に会いに来た方がいたそうです。そのくらい、他人のノウハウなどというのはそう簡単に真似できるものではないし、さらにはその通りやれと言われても「自分の意思」が邪魔して、まったく同じことなどできないものです。先のユーチューバーも、「ノウハウを伝えても多分、誰も真似できないと思います」とおっしゃっていました。山岸氏も、自分のノウハウを公開したところで誰にも真似できないと自信を持っていたのでしょう。

 成功者のノウハウをうわべだけなぞっても、決して成功することはありません。すると、多くの人は「その当時とは環境や状況が違うから」と言いがちです。もちろんその通りで、まったく同じ状態なはずはないのですが、しかし、本当に学ぶべきはその方法論ではなく、それを成し遂げるまでの行動力なのではないでしょうか。要は、汗をかく、地道に続ける、寝る間も惜しんで働く。成功者が後から語るノウハウでは、そういう点はさらりと触れるだけになってしまいがちですが、実際は、割合でいったらそういう努力の方がずっと多く、成功した理由の7割も8割も占めているように思えます。

 「不景気だから先が見えない」などと言う前に、自分たちは本当に努力しているのか。やる前からあきらめて手を抜いていないだろうか。創業時や事業承継時にやっていた努力を惜しんでいないだろうか。根性論は決して馬鹿にできません。現状に悩む経営者こそ、今一度、自分が汗水たらして働いていた時のことを思い起こしてみてはどうかと思うのですが、いかがでしょうか。

(三菱UFJビジネススクエア「SQUET」より2021年3月25日掲載記事を転載)

岩松 正記(いわまつ まさき)氏 税理士
岩松 正記(いわまつ まさき)氏
税理士
宮城県生まれ。東北税理士会仙台北支部所属。大学卒業後、10年間に転職4回と無職を経験し、その後、独立。元査察の税理士に仕えていたため、税の世界の裏事情にも詳しい。主な著書に『経営のやってはいけない!─残念な会社にしないための95項目』など。
D-Com会員登録のご案内

会員登録された方に、メールマガジンで新着記事、新連載のご案内、その他ビジネスに役立つお得な情報を無料でお送りします。会員限定記事も今後続々登場する予定です。ぜひご登録ください。
D-Com会員登録はこちら