税理士の岩松正記氏が三菱UFJビジネススクエア「SQUET」で連載しているコラム『取引したい会社、したくない会社』から、人気記事を転載する。今回は、リスクを負うことが怖いのは誰しも当然だが、むしろ会社にとっては何もしないことの方がリスクなのではないか、というお話。
コロナ後が見えてきた?
いよいよ64歳以下の人にもワクチン接種が始まりました。ある会合で一緒になった薬品関係の会社の代表が「海外の状況から判断すると、ワクチン接種が広がれば間違いなくフェーズが変わる」とおっしゃっていたのですが、その予測に従えば、新型コロナウイルスの新規感染者数も徐々に減少していくのかもしれません。実際、株価の動きもそれを見込んで上昇しているといわれており、経営者としてはそろそろ、新型コロナの収束後にどのような策を取るかの結論を出さなければならない時期にきているようです。それどころか、今準備しておかないと3カ月後なり半年後に大きく後れを取ってしまう。いや、もうすでに後れを取ってしまっているのか。その結果は、年内には明らかになるでしょう。
「コロナが明けたらね」
昨年からありとあらゆる会合やイベントが中止され、飲食店などは自粛要請により休業を余儀なくされました。行きたくても行けない、参加できないという状況下でも、必死になって感染予防対策を実施し、休業せずに活動している人たちがいました。そのような相手に対し、私たちはつい「コロナが収まったら行きます」とか「世の中が落ち着いたら参加します」などと言ってしまいます。
当事者であれば、何も考えずに休んでしまった方がラクでリスクも少ない。そう思っても当然でしょう。しかし結局のところ、コロナ禍であろうと何であろうと、行動する人はきちんとリスク管理を行って行動するし、行動しない人はしないことでリスクを回避しています。それはそれで、決して悪いことではありません。しかしながら、このような状況の中どう行動するかで、すでに大きな差が出ています。
私の知人のイベンターは、昨年春からイベントが次々中止になってもへこたれず、イベント自体の数は減らさず、無観客のスタジオからオンライン中継するとともに、録画を期間限定で販売することで事業を続けました。今はSNSなどを利用することで、コストを掛けずにそれらを行うことができるのです。宣伝やファン・関係者との交流もSNSを活用して継続し、冬ごろからは感染予防対策を十分に練って徐々に来場イベントを行い、今では録画の販売は完売続出、数カ月先の来場イベントも次々に満席となっているそうです。話を聞くと、持続化給付金や一時支援金などの助成金は、一切もらっていないとか。新型コロナの影響を最も大きく受けた業界にあっても、努力と工夫次第で乗り切ってしまっている会社は、決してここだけではないと思います。