税理士の岩松正記氏が三菱UFJビジネススクエア「SQUET」で連載しているコラム『取引したい会社、したくない会社』から、人気記事を転載する。今回は、注文を広く受けて売り上げ拡大を目指すか、客を選んでしっかりつかむことで安定を目指すか。こうした攻めか守りか、どちらを優先するか選択することこそが経営の醍醐味ではないか、というお話。
ミシュラン人気店の話
コロナ禍の昨今、飲食店に関しては緊急事態宣言の延長などで相変わらず不安な状況が続いていますが、それでもやはり、盛況なお店は存在しています。
『世界のミシュラン三ツ星レストランをほぼほぼ食べ尽くした男の過剰なグルメ紀行』の著者である藤山純二郎氏に聞いた話ですが、今のような状況でも全く予約が取れないお店はたくさんあるとのこと。ミシュランガイドで星を持っている某店などは、半年先の予約を解禁したというので電話をかけまくったものの全くつながらず、即日で来年夏までの予約が埋まってしまい、結局、藤山さんの予約は取れなかったそうです。
ミシュランの星を取るには、会員制でなく「一般客が利用できる」という条件があるそうですが、多くのミシュランガイド掲載店では当然のことながら人気が高いため、なかなか予約が取れません。これでは一般客には利用しにくいのではないかとも思うのですが、しかし、お店側にしてみたらこんなにいいことはありません。はるか先まで売り上げが見込めるわけですから、仕入れや資金計画なども予測が立てやすい。当初予定していた具材が入ってこなくなったとしても変更はしやすいでしょうし、何より予約により来客の名簿(情報)は事前にわかっているのですから、お店から連絡を取ったりすることで、いくらでも対処できるわけです。藤山さんによれば「こういうお店は、3 年は大丈夫」とのことですが、確かに、お店にとって理想の形と言えましょう。