税理士の岩松正記氏が三菱UFJビジネススクエア「SQUET」で連載しているコラム『取引したい会社、したくない会社』から、人気記事を転載する。今回は、新商品・サービスの開発はどうすればできるか。ドンドンほかの成功例を吸収するのもよし、自社のオリジナルに固執するのもよし。それを決めるのは社長の役目――というお話。

模倣から新たなものを生み出す会社、オリジナルにこだわる会社
写真/Monet stock.adobe.com
[画像のクリックで拡大表示]

「新規」にこだわる

 売り上げが低迷した際などにその打開策として挙げられるのは、多くの場合「新商品の開発」です。既存の商品やサービスが売れないのだったら、何か別の、新しいモノやサービスを提供することができれば窮地を脱することができるのではないか。既存の売り上げに、別の新たな売り上げを積み上げることができると考えるからこそ、多くの会社が新商品の開発に血眼になる。新分野への進出なども同じことで、どのような会社でも、まずはこのように考えることでしょう。しかし、それが簡単にできれば誰も苦労はしません。新商品や新サービスが簡単につくり出せないからこそ、つくり出せたところはうまくいく。多くの人が、そう信じています。

独創性は本当に大事なのか?

 では実際に、新商品・新サービスの開発はどうすればできるのか。これは言うまでもなく、「ほかに学ぶ」に尽きます。これまでまったく存在しなかった画期的なものを開発する、なんてことはそう簡単にはできませんから、無から有を生むようなクリエーティブな作業をするよりも、既存品を研究し、その不便なところや不満な点を解消し、より改良された商品やサービスをつくり上げる。これを「真似(まね)」とか「パクり」などと言うのは簡単ですが、実はできそうで、できるものではありません。

 そもそも、世の中の成功事例を見てみれば、無から有を生み出したものの方が少ないと言っていいでしょう。確かに、自動車はフォードが大量生産を実現し、大衆化されました。しかし、現代の自動車産業を席巻しているのはそのフォードではなく、トヨタやフォルクスワーゲンです。もっと身近な例を挙げれば、今や私たちの生活に不可欠なインターネットの検索システムも、決してグーグルが発明したものではないのです。

 ライバルを研究するのではなく、正規の手続きで指導を受けて、まさに「藍は青より出でて藍より青し」となった例もたくさんあります。有名なところでは、松下電器産業(現・パナソニック)が家電業界に進出する前に、オランダのフィリップスから技術指導を受けたということなどもありました。有名なラーメン店だって「どこどこで修業した」が売り物になっているものです。もちろん正規の手続きを踏んでいなくても、私たちのような士業だって、もともとどこかに勤めていてそこのやり方を学んで独立するものです。

 このように、発明品を模倣した会社が新たな商品を生み出し、時にはオリジナルを超えてしまうような事例は挙げればキリがありません。「学ぶ」の語源は「真似ぶ」だというのが通説です。発明者や先駆者に対し、真摯に学びを請うた後、オリジナリティーを生み出す例も多々あります。というより、この世の中のすべての製品・商品が、結局のところ大部分は模倣品だと言ってしまっていいのかもしれません。