仕事において「上司が部下に対して何かの指示を出す」ということは日常風景ですが、これに関する悩みとしてよく経営者や管理者層から相談されるのが、「指示をしても思うように下が動かずに困っている」「同じことを何度言っても動かない部下がいる」──というものです。部下を持つ立場にある人は、きっと一度や二度は同じように思ったことがあるでしょう。今回はその原因と解決策についてお伝えしていきます。

部下を動かす上司の、伝え方の秘訣
写真/Monet stock.adobe.com
[画像のクリックで拡大表示]

原因に応じたアプローチが良くない状況を変える

 「思うように部下が動かない」といった相談を受けた場合に、その人に「どう対応していますか?」と質問すると、圧倒的に多い回答は「繰り返し言っているんですがなかなか……」というものです。実は、まずここに問題があります。「繰り返し言う」ということは、同じことを繰り返しているということで、行っていることが同じであれば、基本的に結果は変わらないのは当たり前です。伝えても思うような結果(部下が指示に対し適切に動く)が得られないのであれば、伝え方を変えるべきです。

 また「なぜ、指示に対して部下は動かないのでしょう?」と質問を続けると、そうした状況にある上司の多くが、明確な回答を返せません。原因らしきものを押さえているようでも、実は憶測にすぎずはっきりと本人と話したわけではないというケースもよくあります。問題解決の大原則は「問題の原因を明らかにし、その原因解消に必要な手立てを打つこと」であると知っているにもかかわらず、明確な原因を把握することなく通り一遍のアプローチを繰り返して、問題が解決しないと悩んでいるわけです。「指示をしても動かない部下」という上司の悩みの原因は、実はかなりの確率でこの部分でのつまずきにあります。

 ここで、私の実体験やコンサルティング現場で見てきた経験から、「部下が指示通りに動いていない」と上司が感じる時、「部下の心のうち(真実)」はどんな状態になっているのか、典型的な状況を図解してみましょう。

「部下の心のうち(真実)」はどんな状態になっているのか、典型的な状況を図解
[画像のクリックで拡大表示]

 いかがでしょうか。図の右側に書いてあるように、原因を具体化することができれば、個別の改善アプローチもイメージしやすくなります。つまり、「上司の指示に対して、部下が思うように動いていないのはなぜか?」の原因をしっかりと押さえるようにすれば、改善への道は見えるはずなのです。また、実際に「思うように部下が動かない」という問題が起きた場合、原因を明らかにするプロセスは、憶測ではなく必ず本人と対話することが重要です。今回ご紹介している図解を参考としていただけるのはうれしいのですが、上司がこのいずれかの原因に勝手に当てはめてしまうことはNGです。

 例えば、「私の中では、指示したことについてちゃんと動いてくれていない認識だけど、君の中では問題無く動いている認識?それとも動けていないという認識?」──。こんな問いかけから原因を掘り下げていくようにしてみてください。ちなみに「動いていない」という前提から入らずに、動いているかどうか、互いの認識のすり合わせから入っているのもポイントです。決め付けから入りがちな上司に対して部下がどう思うかを想像いただければ、その理由はお分かりいただけると思います。