上司として自分の認識のズレを疑ってみる

「自分にできることが、必ずしも他人にできるわけではないし、自分の当たり前もまた、必ずしも他人の当たり前ではない」

 こうやって文章に書いてみると、別になんてことはない至って普通の考え方、視点です。きっとこの2つのポイントに違和感を持つ人も少ないと思います。ところが日々接する部下に対して、頭の中からこれらのポイントが抜けてしまう上司がいます。特に、マネジメントがうまくいっていない組織の管理職・経営者は、この傾向が強いというのが私の率直な感覚でもあります。

 例えば、「権利を先に主張する部下への困惑」も根底にあるのは同じことです。「権利を主張する前に義務を果たすといったことは部下も当然分かっているはず」という前提があるために、自分の想定と違う結果に「なぜ?」と思ってしまうのです。

 人材育成や営業力強化のコンサルティングをしていると、「なんで〈そんなこと〉もできないんだ」「いや、普通○○するだろ」といった、認識がズレている時の定番フレーズを上司が口にしている場面によく遭遇します。これは実は、上司にとっての仕事をする上での「当たり前」の価値観や考え方に対して、部下とのズレを無意識に感じているからこそ出てきた可能性が十分にあります。日常を振り返ってみて、確かにそんなフレーズを口にすることがあると思い当たる方は、部下と「当たり前」の部分にズレがあると疑ってみたほうがよいでしょう。

 経営者と幹部など、一緒に仕事をしてきた期間が比較的長い関係でもこうしたズレは起こりがちです。だからこそ現場の管理職と部下の間に認識のズレが生まれるのはある意味仕方ありません。大事なのはそのズレをどう改善していくかです。今後そのような場面に遭遇した場合、まず自身の考え方を一方的に伝えるのではなく「どこの認識がズレているのだろうか?」という視点を持ちましょう。その上で自分と考えがズレている原因に関心を寄せながら対話をすることで、問題は解決していくと思います。

 ここまで上司と部下の間で、考えの前提や価値観のズレによるコミュニケーション問題が起きた時の対応についてお伝えしてきましたが、本来は基本的な考え方や物事の捉え方などにズレのない状態が理想です。その状態をつくり、維持するためにも、仕事上の「当たり前」「価値観」「ルール」などを、日ごろから部下に伝えて共通認識化しておくことが重要です。

 ここで注意すべきは、上司として共通認識化すべく「発信できているか」ではなく、結果として「部下と共通認識化できているか」です。仕事上の「当たり前」「価値観」「ルール」などを共通認識化する責任は上司の側にあり、伝わっていないのは「理解できない部下が悪い」のではなく「経営者・管理者である自分の伝え方が悪い」という視点で組織マネジメントを考えましょう。そうすれば結果的に組織がうまく回るようになるはずです。

御供田 省吾(ごくでん しょうご)氏 組織営業総研 代表
御供田 省吾(ごくでん しょうご)氏
組織営業総研 代表
キーエンス入社後、一貫してコンサルティング営業に従事。自ら考案した営業手法が「現場発の売れる仕組み」として全社的に紹介されるなど、独自の視点からのコンサルティング営業スタイルを確立。同社の営業エリア責任者を経て、日本最大級の不動産情報サイトを運営するLIFULL(旧NEXT)に入社。若手が成果を出しながら成長する組織を独自の手法でつくり上げ、次世代の現場マネージャーを排出した。同社営業部門責任者を経て、人・組織の成長がクライアントの業績向上につながるよう支援をするコンサルタントとして組織営業総研を起業、現在に至る。
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