経営者や管理者の方々は組織を束ねる立場にいる以上、時には部下に厳しく接しなくてはならないケースもあります。ただ、「○○ハラスメント」という言葉が一昔前には想像もできなかったレベルであふれていて、分かりやすく表現するならば、今の上司と部下の関わりは非常にやりにくくなっていると思います。今回は、部下に厳しく接する典型例である「叱る」というコミュニケーションを題材に、上司が必要に応じて厳しさを用いながら組織を率いていくポイントについてお伝えしていきたいと思います。

叱って感謝される上司は何が違うのか
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「叱られたい」部下がいるという事実

「若い世代を中心に『必要な時には叱られたい』と思っている部下は、上司が思っている以上にいる」──。

 経営者や管理職の皆さんはこの事実を信じることができますでしょうか。今や様々な「○○ハラスメント」という言葉があふれ、部下との関わり方が非常に難しくなっています。客観的に見て、行き過ぎた振る舞いで明らかにパワハラをはじめとした問題行動を取っている上司がいることも事実ですが、多くの上司はそうではないはずです。にもかかわらず、過度に気にし過ぎてしまいとても窮屈そうに見える上司の方々もいます。こうした状況において、「本当は叱られたいと思う部下がいる」わけがないと疑う方がいても不思議ではありません。

 しかし「叱られたい部下」は間違いなくいて、驚くことにそれは少数派ではないのです。若いビジネスパーソンも自分の状況をちゃんと冷静に見つめていて、日々「本当にこれでよいのか、正しいのか?」と迷いながら過ごしているので、上司や周囲からダメなことはダメだと、時には厳しく指導されるほうが自然だと考えてさえいます。指導される機会やその中で叱られるという経験があまりに少なすぎると、「もしかして自分は必要なくて、諦められている人材ではないか」と行き過ぎた不安すら感じるという話を聞いたことも一度や二度ではありません。

 また、部下に新卒社員が多かった頃に私が経験したこんなエピソードもあります。隣の部署の若手社員から「御供田さんはメンバーをよく叱りますよね」と言われて、なぜそんなことを言うのかと話をよく聞かせてもらうと、「叱られるのはできれば避けたいけれど、自分たちができてないことが多いのは自覚しているので、叱ってもらえているというのは少し羨ましい」と言うのです。そこで、「その気持ちを上司に話してみたらどうだろう。控えているだけかもしれないよ」と伝えると、「あの人はきっと叱れないですよ。見ているのは数字だけで私たち自身には関心なんて無いので、𠮟るべき部分にも気づいてないと思います。でも、ちゃんと叱れるというのは、私たちを見てくれているってことですよね。上司が忙しくても自分たち若手を気にかけてくれるのはありがたいし、羨ましいと思う理由はそこです」という本音を聞かせてくれました。

 経営者や管理職の方々は、部下からこんな目で見られているかもしれないと想像するとショックですよね。実はこれ、同じようなことをその部門の若手数人から別々に言われたので、私にとっても大きな気づきとなったエピソードです。つまり、若いビジネスパーソンは、「叱られる」ことはできれば避けたいけれども、一方で自分に問題があった場合にそれに対して厳しい指導があれば受け入れなければならないという自覚を持っていて、そこで叱ってもらえることには感謝する側面さえある。だから、上司は必要な時には「適切に」部下を叱ればよいということなのです。