何のために「叱る」のか

 そもそも上司として「叱る」目的は何でしょうか。主には、目の前に起きている出来事において、あるべきではない状態をあるべき状態へ「よくする」ことです。時には部下に、自分の成長に必要なのだと理解を促すことが目的となる場合もあるかもしれませんが、いずれにしても「叱る」はその目的達成のための手段の1つにすぎません。今はマネジメントについていろいろな視点があって、「叱る」は必要ないという考え方があることも知っていますが、必要な時にさえ「叱れない」のではなく、必要な時には「適切に叱ることができる」ことは、上司にとって大事だと私は考えています。

 研修セミナーなどでこの話をすると「私は性格的に人に強い言葉を使ったりするのが苦手なので……」という意見も出るのですが、ここにはある意味で勘違いがあります。「厳しく」とか「叱る」というと、声を荒げたり強い言葉を使ったりすることを思い浮かべる人も多く、「怒る」(後ほど少し言及します)と混同されている部分もありますがそれは違います。

 例えば、起こっている事柄について、あるべき状態に対して今は何がよくないのかということを1つずつ理路整然と示していくとして、この時の話し方が穏やかであったとしても、部下からするとできていないことを指摘され叱られていると受け止めるケースもあります。事の重要さなどを伝えるために語気を強めることもあると思いますが、これは「よくない」状態を「よくする」ための伝え方の1つにすぎません。本当の意味での厳しさとは「あるべき状態を求めることに決して妥協しないこと」であり、「叱る」に代表される厳しさを持ったコミュニケーションの結果、問題が改善される、もしくは部下が同じことを繰り返さないように学べるか否かが重要なのです。