前回までは上司と部下の個の関わり方にポイントを置いて話を進めてきましたが、今回からは「組織づくり」という少し広い観点のノウハウで、若手を生かす方法を紹介していきます。   「仕事というのは本来自分で考えて主体的に動いていくものなのに、指示待ちの部下が増えて困っている」──。これに心の中で賛同される方は多いのではないでしょうか。若手を中心とした部下に対する上司の困り事、不満としてよく聞かれるものの1つです。では、社員が自ら考えて主体的に動けている組織は、何が違うのか? その答えの1つは「組織としての目指す姿、組織の一員としての行動指針やルールというものが、組織の中で共通認識となっている」ということです。今回はこの視点からの組織づくりについて紹介していきたいと思います。

自ら考えて動く部下が育つ、その環境づくりとは
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考えるための基準を共通認識化する

 若い部下が自ら考えて動けていないという実態をひもといていくと、ありがちな原因が見えてきます。その1つが、その時々で自分が何をすべきか、どう考えればよいのか、若い部下がピンときていないというものです。こうしたことが起こる原因は、自分の行動を考えるときの起点や判断材料、選択基準になるものが、その部下の中で明確になっていないことにあります。ですから、いざ自ら考えて行動すべきときでも(仕事というものはその連続なのですが……)、何をどうすればよいかを適切に考えたり決めたりすることができず、言われたことに応じるだけになってしまいがちなのです。

 上司と長年一緒に仕事をしていたり、組織への在籍期間が長かったりすれば、暗黙のうちに理解できる部分もありますが、それが可能なのは中堅以上の部下だけです。また、そうした部下であっても、実は組織としての行動の基本指針や求められる役割、目指す姿などを明確に提示されないケースが多く、あくまでも今までの経緯を踏まえた「暗黙の認識」がベースとなっています。そのため、改めて認識の一致について確認すると上司と部下との間でレベル感や優先度などにズレがあることは珍しくありません。日常活動の基本となる指針などで上司と部下に認識のズレがある場合は、決して良いマネジメント環境とはいえないでしょう。

 一方で「組織としての目指す姿、組織の一員としての行動指針やルールというものが組織の中で共通認識となっている」と、照らし合わせる基準があるため、部下は自分の行動を考えやすくなります。もちろん、若い部下の場合は組織の目指す姿や行動指針などが伝えられたからといって、すぐに自ら動くことにつながるわけではありませんが、「目指す姿、組織の一員としての行動指針」などが共通認識化されている環境下で日常的に「うちの組織が目指す姿、行動指針などを踏まえるとどうすればいいと思う? どうすればよかったと思う? 何が大事と思う?」と問いかけて思考トレーニングを積み重ねれば、自ら考えて行動する習慣へとつながっていきます。何もない状態で、やみくもに「もっと考えろ、頭を使って仕事をしろ」と言っても、若手にはなかなかハードルは高いものです。

 そこでまずは、

①組織が目指す姿
②組織の一員として立場(職位)ごとに求めること

──この2つを定義し、組織の中で共通認識化することから始めてみてください。

 ちなみに、これらは今も会社全体として何らかの形で決まっているとは思いますが、会社という大きな単位ではなく、部署ベースでの身近な視点からの共通認識づくりということです。これにより、若手が本人たちの日常を基準に照らし合わせやすくなります。会社の全体像に沿いながら部署単位で上記の2つを定義していくと、若手が自ら考えて動ける風土をつくりやすくなります。