人と関わる上での「言葉の持つ力」というものを、年齢や経験を重ねるほどにより強く感じるようになりました。仕事で関わっている同世代以上の方とこのことを話していても、以前より強く感じるという部分に共感されることが圧倒的に多い印象です。言葉の持つ力には、「プラス」の力も「マイナス」の力もあります。組織マネジメントや人材育成が上手な上司というのは、総じて言葉の持つ力をよく知っているだけでなく、そのプラスの力をうまく使っています。こうした、言葉の持つ力を知っていることの先にある、積極的に「使っている」「活用している」という部分がとても大事なのです。今回はこのテーマについて、具体的な実践例を交えて解説していきます。

育て上手の上司は、言葉の力でその気にさせる
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肯定や承認につながる言葉を意識して使う

 世の中には「人をその気にさせる達人」がいます。その人と話していると、なぜか頑張ろうと思えてしまう。新しいことにトライするヤル気が湧き起こってくる、大変な状況だけど何とかなりそうな気がしてしまう。

 一方で、「人のやる気を折る達人」もいます。もしかしたら、今、誰かの名前が浮かんで苦笑いした人もいるかもしれません。こうした誰かは往々にして、人の話に対して否定的な反応が多かったり、話の腰を折ったりする。何らかの提案を持ち掛けられた時に、話の主導権を奪って持論を披露しがちというケースもあります。

 上司はどちらのタイプが望ましいかについてはここで聞くまでもないことだと思いますが、皆さんご自身はどちら、もしくはどちら寄りの上司でしょう。そして、部下の皆さんに対する認識はどちら寄りでしょうか。もしご自身が「人をその気にさせる達人」寄りではないと思われた方、自社の管理職にそうではない人がいるのであれば、まずは意識して行動を変えることで変化を生み出せます。

 「人をその気にさせる達人」系の上司は、日頃から部下に対して承認コミュニケーションを心掛けていて、頑張っている姿や工夫していることなどによく目を配り、「いいね!」という声掛けを丁寧に実践しています。そして何より、聞き上手であり、合いの手や相づち上手でもあります。

 例えば、部下から何らかの良い報告やトライしてみたいという相談があった時に「いいね」「すごいね」「さすが」「面白いね」……。こうした相手を肯定する言葉を使って会話に入っていきます。次に「なぜそんな良い結果が出せたの?」「何でそれをやってみたいと思ったの?」など、部下の行動内容や動機要因に関心を寄せる(話を広げる)。そして、「へぇ~」「なるほど」「そういうことか」「いいじゃない」こういった合いの手や相づちを挟みながら部下の話を聞き進めていきます。この時、声のトーンでも相手の話への関心をしっかり感じさせます。部下がうれしい報告や話を持ち掛けてきたら、一緒になって喜ぶことができるのもこういった人の特徴の1つです。

 間違っても、「でもさ」「どうだろね」「別に普通じゃない?」といった非肯定的キーワードを会話の序盤から使ったりはしませんし、話題への関心の低さが伝わるような声のトーンで受け答えをしたりもしません(「人のやる気を折る達人」系の上司は無意識にこうした反応をしがちです)。

 経験豊富な上司からすると、部下、特に若い世代の提案などは課題や問題が目につきやすいと思いますが、そこを指摘する前にまずは肯定するというコミュニケーションを挟むだけでも部下の感じ方は変わります。その上で、「せっかくなら、こうするともっと良くなる気もするけどどうだろう?」「ここはちょっと心配な点だけどどうかな?」と肯定の後に付け加えて気になった点を伝えるとよいでしょう。

 自分の行動に気づいて声を掛けてくれたり、意見を肯定しながら聞いてくれたりする。うれしい出来事があれば一緒に喜んでくれるような「人をその気にさせる達人」系の上司は、部下にとってさらに頑張ろうというモチベーションの源になります。経営者、管理職でも、頑張ろうという気持ちにさせてくれる人がいるという方は多い。当たり前ですが、若い部下にとっては皆さん上司がそうした存在なので、その役割を意識した関わりを実践していきましょう。