プラスの雰囲気づくりに共通言語やネーミングを活用

 経験豊富な経営者や管理職の方であれば、「共通言語」も部下の行動を促進させる力を持っていることをご存じと思うのですが、組織マネジメントや人材育成に課題がある組織ほど、上司が意識して共通言語を活用しているケースが少ないと感じます。共通言語としては例えば、スローガンや何らかの行動の総称などが代表的なものですが、これらを掲げるだけで満足してしまって、形骸化している光景をよく見かけます。

 共通言語は日常の中で当たり前のように使い続けてこそ、組織行動の促進効果を発揮するツールとなります。組織として大事な行動ほど、部下に積極的に継続して取り組ませる必要がありますが、その行動自体を共通言語化して関わる全員が頻繁にコミュニケーションの中で使うような雰囲気をつくることで、その行動を組織として継続する推進力へと変えていく。共通言語を日常的に使いやすいようにするためには、シンプルで、つい使いたくなるような言葉のチョイスやネーミングも重要です。

 例えば、私は管理職時代、毎年、その1年で重視する行動に関する部内スローガンを掲げていたのですが「ブレイクスルー」というキーワードを掲げた年がありました。その年は、その後の社運を賭けるような無謀ともいえるほどの大きな目標を背負うことになった大変な1年で、目標達成のためには既存の方法だけではとても無理だということは分かっていました。そこで、従来の方法や考え方という壁を突き破り必ず目標を達成するということを、単なる挑戦ではないというニュアンスも含めて、ブレイクスルーというキーワードを共通言語として使って、組織全体へ意識付けたのです。

 先ほども書きましたが、共通言語に組織の行動を後押しするパワーを持たせるためには、その共通言語がどのくらい日常的に使われているかがポイントになります。そこで「それはブレイクスルーするくらいの行動かな?」「ブレイクスルーする方法としてどんなアイデアがある?」といったように、上司の私が率先して日常からブレイクスルーという言葉を使うようにすると、部下同士の会話でもこのキーワードが使われるようになり、次第に組織一体となって常にブレイクスルーを意識した行動が推奨される雰囲気が生まれます。結果、一人ひとりがそれまでにない行動を積み重ねてくれて、このブレイクスルーというキーワードを使う理由になった大きな目標を、組織として達成できました。

 「ネーミング」を活用する例も挙げてみましょう。私の組織では、営業力を鍛えるためにロールプレイングを大事にしていたのですが、苦手な人からすると、できたら避けたいという気持ちもあります。そこで少し面白がって、継続的にロールプレイングに取り組む空気をつくる狙いで「ロールプレイングをする」ことを「ブルペンに入る」という表現に変えてみました。ブルペンは、野球のピッチャーが本番(マウンド)に上がる前に投球練習する場所です。そこで、客先での商談を本番として、その前に担当者が練習する場となるロールプレイングをピッチャーに重ねて「ブルペン」と名付けたのです。

 実際にどうやって使うかというと、例えば営業訪問をする前日に「明日商談あるからちょっとブルペン入って肩温めようか!」と若手に声掛けをするわけです。ささいなことですが、これでも心理面での変化は生まれますし、本人や周囲の先輩たちも「ブルペンに入る」というフレーズを使ってみたくもなるのです。結果、私が声を掛けなくても、自然とロールプレイングが実施される雰囲気に変わっていきました。