「長屋での子育て」を組織の人材育成に持ち込む

 今、働くうえでの価値観キーワードとして「協働」を耳にすることが増えていますが、新人や若手の育成にも、この協働の視点を取り組むことはとても効果があります。昔でいうところの「長屋での子育て」の感覚です。そのためにも、組織全員が新人・若手に関心を持ち積極的な育成につながるコミュニケーションを取れる環境を整えるのも上司の役割です。

 組織内で新人とのコミュニケーションを活性化していくベースとしては、新人が今の時期に何に取り組んでいるか、どんな課題を持っているかを組織全員が分かるようにすることがお勧めです。今の取り組み状況が分かれば、周囲もアドバイスや声掛けがしやすくなります。ピンときた方もおられると思いますが、ここで先ほど紹介した新人StepUpMapを活用すると非常にスムーズに情報が共有できます。

 具体的には、まず新人StepUpMapを組織全員で共有します。その際、各自で確認するようにアナウンスするのではなく、組織で一緒に読み合わせる方がニュアンスの認識も合わせやすくなり、組織としての育成方針に一貫性をもたらすことができます。次に、月1回でいいので全員が参加するミーティングの場で、新人StepUpMapの進捗状況を共有するようにしてください。

①新人の成長状況を組織全体で認識・共有する
②承認コミュニケーションの実践
③いろいろな人からのアドバイスや経験談をシェアする

 このミーティング時の狙いは上の3点ですが、特に重要なのは②③です。間違っても、進捗の不足や課題点を全体の前で新人に問いただすような場にしてはいけません。進捗の課題点などは別の場で上司と育成担当で話し合い、育成担当から当事者である新人へ個別指導させるようにしてください。

 ミーティングで新人StepUpMapを使って成長度を確認共有しながら、成果について「いいね!」「頑張ってるね」「いつも〇〇な工夫していて感心してる」などと伝えることで、新人は頑張りへの手応えを感じられますし、苦戦していることがあれば「私もそこは苦労していたよ」と先輩が経験を共有することで、心理的負荷を軽減できます。「誰か良いアドバイスある?」「〇〇さんと教えてあげてよ」とコミュニケーションを促せば、ミーティングが新人に対して全員の関わりを促す場にもなります。これをミーティングで継続していくことで、自然と周囲が新人の状況に関心を持って関わるような雰囲気ができていきます。

 また、経営者や管理職が「新人に声を掛けてくれてる?」「新人について気になっていることある?」と周囲へ日常的に問い掛けることで、自然と新人に対する関心を高める効果があります。この機会にコラム第2回でご紹介している「観る」のポイントを皆さんで読んでいただくと参考になると思います。

 このような仕掛けで、新人に対する組織全体の関心が高まり良質なコミュニケーションが自然と生まれる。まさに「長屋」での子育て的な環境ですよね。いろいろな人から日常的に声を掛けてもらえる。頑張っていることや順調さが常に確認できて、なおかつそれを周りから認められ、アドバイスももらえるという状態は、新人にとって安心につながりますし、周囲の期待や気持ちに応えたいという動機にもつながっていきます。つまり、これによりコラムの冒頭で紹介した新人の不安要因の③④が解消する仕掛けになります。

 経営者の方は、若手育成の責任者に対して、まずは不安も含めた新人の心理状況を把握できているかどうか、次にその新人の入社1年後、2~3年後に目指す成長の姿とその実現に向けた具体的な指導教育内容、およびそうした若手の成長目標を実現できるイメージが持てるかどうかを確認。いずれも抽象的過ぎないか、組織内で統一認識にできているかどうかを併せて、一度確認してみるのもよいでしょう。

 今回のコラムでご紹介してきた新人や若手を組織に定着させるために、不安要因を取り除くような組織環境を整えることは、社員のエンゲージメント強化に重要とされる「ウェルビーイング」の実現にもつながります。また、新人や若手が安心して頑張れることは活気へとつながり、ボトムアップで組織の活性にも好影響をもたらすことになりますので、ぜひ取り組んでみて下さい。

速攻活用ツール第5弾

■新人StepUpMap
まずは項目に添って必要な内容を明文化してスケジュールを組みます。出来上がったら、各内容を設定したスケジュール通りに全て進められた場合に、半期や1年後に目指す状態が実現できるかを逆検証して、OKであれば完成です。その後は、本人だけでなく、組織全体で共有し、全体で一緒にその進捗を支援するようにしていきましょう。

御供田 省吾(ごくでん しょうご)氏 組織営業総研 代表
御供田 省吾(ごくでん しょうご)氏
組織営業総研 代表
キーエンス入社後、一貫してコンサルティング営業に従事。自ら考案した営業手法が「現場発の売れる仕組み」として全社的に紹介されるなど、独自の視点からのコンサルティング営業スタイルを確立。同社の営業エリア責任者を経て、日本最大級の不動産情報サイトを運営するLIFULL(旧NEXT)に入社。若手が成果を出しながら成長する組織を独自の手法でつくり上げ、次世代の現場マネジャーを輩出した。同社営業部門責任者を経て、人・組織の成長がクライアントの業績向上につながるよう支援をするコンサルタントとして組織営業総研を起業、現在に至る。
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