「上司が部下に仕事をうまく任せられない」──。これは、上司の業務負荷軽減も含めた「最適な業務分配による組織の効率最適化」を主目的に語られることが多い課題です。同時に本コラムのテーマである「人材育成」「若手を生かす」という視点で考えても、非常に重要なマネジメント要素です。また「部下に仕事を任せる」ということは、上司と中堅以下の部下に関する課題として捉えられがちですが、経営者と幹部という上下関係においても同様に存在します。今回は、部下に仕事を任せることがいかに人材育成において重要なのかという視点をふまえながら、そのノウハウを解説します。

2つの視点から考える「部下に仕事を任せる」ことの重要性
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仕事を任せられない上司が陥っている悪循環サイクル

 個人としても組織としても、部下に仕事をうまく任せることができていないと感じている上司はどの組織にも一定数います。「本当は仕事を任せたい」と思いつつも、実際はできていないというのがその大多数です。きっと、本コラムの読者にもそんな方がたくさんいらっしゃることでしょう。

 部下に仕事を任せたいと思っていながらも、実際にはできていない理由は、ほとんど次の2つに集約されるのではないでしょうか。

① 任せられる人材が(育って)いないから
② 自分でやってしまうほうが早いから

 このような理由で、結果として「部下に仕事を任せる」マネジメントが実践できていない上司の多くは、図のような悪循環サイクルにハマってしまっています。

仕事を任せられない上司が陥っている悪循環サイクル
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 事実、管理職研修などでこの図を見ていただくと「確かに……」と多くの方が現状を反省されます。そこで、この悪循環サイクルから抜け出すことについて「いつになれば、どうすればできるようになりますか?」という質問を続けると答えに窮したり、苦笑いされたりという人が多いのですが、思考を重ねて最後に導き出される答えは「結局は部下に仕事を任せて、できるように自分たちが育成するしかないですよね」というものです。

 つまり「うまく部下に仕事を任せることができていない」と悩む上司も、実は解決策は分かっているのです。それでも、明確となっている課題を棚上げ、先送りしてしまう原因には、良い改善方法が分からないということもあるかもしれませんが、何よりもまず必要なのは「上司の責任として現状を変えるという覚悟と、そこから一歩踏み出して行動実践する意志」です。

 本当は部下に仕事を任せる方がよいと頭では分かっていながら、実践できずに自分で仕事を抱えてしまっている上司は、少し表現が厳しいかもしれませんが、以下のような上司だと言い換えられる可能性があります。

① 部下の成長機会を奪っている上司
 →任せないからいつまでもできる人材が育たないのでは?
② 部下の実力/可能性を信じられない上司
 →任せてみる前から無理だと諦めていませんか?
③ すべき部下育成を実践しきれていない上司
 →以前任せてダメだったならできるように指導育成すべきでは?
 →安心して仕事を任せられる部下を指導育成するのは上司の責任では?
④ 組織の最適な業務分担環境を整えていない上司
 →各業務が適切な人に割り振られた状態を整えるべきでは?

 このような視点から改めて自らを振り返ってみると、上司として「部下に仕事を任せる」は積極的に実践をすべきであって、できていない状況は良くないと再確認できると思います。