意識すべきは「成長機会創出」視点での「部下に仕事を任せる」

 前述の視点で現状を振り返り、この機会に「部下に仕事を任せる」ことに積極的に取り組もうと意志を固めたら、次はどうやって任せていくかです。まずは、上司が抱えている仕事を下図の視点から仕分けをしてみてください。

意識すべきは「成長機会創出」視点での「部下に仕事を任せる」
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 「A」は引き続き上司が担う仕事なので、部下に任せる仕事として改めて仕分けるのは「B」ですが、その際の判断基準は、

 「誰がその仕事をすることが組織にとって最善か」

 ──に置いて考えるようにしてください。また、ここでの「最善」の中には、本コラムのテーマである人材育成の視点から「部下に仕事を任せることを成長機会創出にもする」という目的も含めて考えます。任せたい仕事を既に対応できる力を持った部下にばかり任せていては、いつまでたっても次の人材は育ちません。本コラム第2回の「部下を観る」を参考にしていただきつつ、組織の責任者として「誰にどんな成長があると組織にプラスか、それはどのような経験を積ませることでスキルとして習得できそうか」を「常に」考えておくと、いざ部下に任せるべき仕事が発生したときに最適な判断がしやすくなるでしょう。もちろん、上司の抱える仕事を部下に割り振ることによる「最適な業務分配による組織の効率最適化」という視点も大事なので、この両視点のバランスをどう考えるかが「部下に仕事を任せる」マネジメントのポイントともなります。

 「B」では、まず①の部下の成長機会創出も狙った仕分けの場合、部下自身はまだその仕事を一人でやるには能力が足りないと評価している中での判断なので、上司としても少し思い切りが必要かもしれません。しかし、まずひとつお伝えしておきたいのは、思い切って任せてみたら実は部下は問題なくその仕事をできてしまったというパターンが案外あるということです。この時は、部下の思わぬ成長を喜びつつ、それに気づけていなかった上司としての関心、観察意識については反省したいところです。

 次に、実際には上司の見立て通り少し部下に能力不足がある場合に、どのように仕事を任せるかです。ここでは、上司としてどこに不安を感じて任せることをためらっているのか、そこを明確にすることが鍵となります。当たり前の事前準備に思われるかもしれませんが、この部分が漠然とした状態にあることが意外と多いのです。課題への現状認識が曖昧だから具体的な改善策を考えられず、その結果いつまでも不安が解消されず仕事を任せきれない。しかし、上司としてどこに懸念や不安があるかを具体的に突き詰めて原因分析をすれば、実は引っかかることは1つか2つしかないことがほとんどです。そこを明確にできれば、後は部下の状況に応じて懸念点に対する事前準備(対策)をどれだけ講じるかです。

 忙しくて検証分析の時間が取れないという意見もあるかもしれませんが、そこは「時間の投資」だと考えてください。目の前の忙しさや自分でやってしまった方が早いからと先送りしていたことも、少し時間をとって検証すれば、あっさりと部下に仕事を任せて成功させるまでのイメージを獲得できることも多いのです。その少しの時間を捻出して部下に仕事任せる準備に「時間の投資」をする。結果、部下に仕事を任せたことで生まれる「上司が使える時間」は、先々を考えても投資した時間を大幅に上回るはずです。

 「B」における②のラインは、「組織の業務効率改善」優先の仕分けですが、この際に注意したいのは、特定の部下に仕事を集中させないことです。つい頼みやすい部下に任せてしまう上司もいますが、仕分けの基準を「最適な業務分配による組織の効率最適化」に置く以上、特定の部下に仕事が集中しないようにバランスの考慮を忘れてはなりません。部下たちがそれぞれどのくらい組織の仕事を請け負っているか、「量」と「責任の重さ」の視点から状況を評価し、その上で業務負担の最適化を行ってください。

 ここまでは上司自身が抱えてしまっている「本来は部下に任せるべき仕事」を見直すポイントについて解説してきましたが、できれば組織の仕事全体についてもあらためて再分配を検討し、若手の成長機会損失がないよう組織としての最適な業務分担状態を整備できるとベストです。