事業を継続していくためには、同じことを繰り返しているだけでは停滞か衰退が待っているだけであり、新しいことに挑戦することが重要である──。このことを誰よりも実感し、重視しているのは、おそらく経営者だと思います。だからこそ、社員一人ひとりに挑戦することを求める方も多い。組織のコア層である管理職や中堅社員が日常的に挑戦できる状態になるには、若手のうちからその重要性と取り組み方を体感していることが不可欠です。そこで今回は、若手にとっても挑戦が日常となる環境を、どのように整えていくかについて解説していきます。

挑戦マインドを若手に持たせる環境を整える
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上司のコミュニケーションで若い部下の背中を押す

 経営者が「自社の一員として一人ひとりが挑戦をしてほしい」と発信しても、それだけで若手が行動を起こすことはなかなか難しい。鍵となるのは、経営メッセージを受けた管理職が、若い部下に対してどのように関わっていけるかです。経営者はメッセージを発した上で、まずは管理職層に「若手にも挑戦姿勢を日ごろから求めているか」「今は具体的にはどのような内容に取り組ませているのか」を定期的に問い掛けて意識づけをしていくべきでしょう。

 その上で、管理職が若い部下の挑戦姿勢を習慣化していくために、実践すべきポイントは次の5つです。どれも目新しい内容ではないかもしれませんが、大事なのは「丁寧に徹底されているか」なので、その点も留意しながらチェック(経営者の方は管理職に実態確認)してください。

①部下にコンフォートゾーンから踏み出すことを求めている

 まずは経営者からのメッセージを受けて、改めて上司からも部下に対して「挑戦すること」を明確に求め、若手である君たちも当事者であることを伝えているか。これが大事な基本です。その際に、なぜその必要があるかをしっかりと理解できるように伝えていなくてはなりません。会社が継続発展していくためには一人ひとりの成長が不可欠であることや、自分が出来ることを実践するだけ、繰り返すだけのコンフォートゾーン(無理する必要がない居心地の良い状況)にとどまっていては適切な成長はないことを伝えているか。そこから一歩踏み出して、今、自分ができることの先へ挑戦することが個の成長、ひいては会社の成長につながるという話を伝えているかなどがポイントです。

②挑戦に相当する行動イメージを共有している

 「挑戦」という言葉の意味は誰も分かっていますが、自分が置かれた状況において「挑戦に相当する行動」とはどういうものを指すのかということは、若い世代ほど頭の中で明確にできていません。その状態でただ「挑戦せよ」と伝えても簡単に行動には移せないので、まずは上司と部下とで、今の状況で求められる挑戦の具体的なイメージをしっかりと共有した上で、どんなことに取り組むかを一緒に設定することが重要になります。

③若手の挑戦を成功体験につなげる上司のフォローがある

 より高いレベルや新しいことに取り組むわけですから、部下が何の助けもなく一人で簡単にやり遂げられるものではないでしょう。だからこそ、上司はしっかりと成功へのサポートを行うことで新しい挑戦を成功体験へ導き、部下の成長につなげなくてはなりません。実はこの時のコツは、コラム第10回[2つの視点から考える「部下に仕事を任せる」ことの重要性]の2ページ目に解説した「部下に仕事を任せることを成長機会創出にもする」がほぼ同じなので、ぜひそちらを参考にしてください。

④挑戦しての失敗は問題ないことを知らせている

 若い世代は上の世代と比べても失敗することを過度に避ける傾向が強めで、特に仕事においては失敗してはならないと強く思っていることが珍しくありません。理由の1つは、マイナス評価を受けたり、ネガティブなイメージ持たれたりしたくないことにあるようです。しかし、上司からすれば若い部下が新しいことに挑戦すれば、失敗したり思うようにうまくはいかなかったりすることは、想定内のはずです。そこで最初に、「挑戦して失敗したりすることは大きな問題ではない」とはっきりと伝えることが重要です。これだけでも、気持ちが軽くなって一歩踏み出す勇気を手にする部下は、上司が思う以上にいます。

⑤まずは挑戦する姿勢を評価している

 結果とは切り離して、まずは一歩を踏み出して挑戦する姿勢をしっかりと承認、評価することがポイントです。失敗を恐れ過ぎず、まず一歩踏み出すことは称賛されるという認識を持たせることが、次へとつながります。

 このような上司のコミュニケーションによって背中を押されることで、若いうちにコンフォートゾーンを抜け出したアクションの楽しさ、やりがい、重要性を経験の中で学び、それが当たり前の習慣になっていく──。そして、その後に中堅、さらにその上へと成長する過程でも、その状況にふさわしい内容に自ら挑戦していける人材へと育っていくのです。