上司の自己開示と部下への関心が、信頼関係構築サイクルの起点

 では、その土台となる「上司と部下の信頼関係」をいかに築くか、あらためて強化していくか。そのためには、日常の良質なコミュニケーションの積み重ねが上司と部下の信頼関係へつながり、上司と部下の信頼関係があるからこそ日常の良質なコミュニケーションが成立するという、「良質なコミュニケーションと信頼関係構築のサイクル」を組織全体としての意思と意図をもって実践していく必要があります。上司と部下の良質なコミュニケーションと信頼関係は、こうしたループの状態になっているわけです。

上司と部下の良質なコミュニケーションと信頼関係

 それでは、どうすればよいのか。相手のことを知ることなく盲目的に信頼することはできませんから、まずは良質なコミュニケーションからそのサイクルを動かしていきます。図に示してある自己開示と相手への関心を高め、「相手を知り、理解する」意識を持ったコミュニケーションを、上司から率先して実践していくことからスタートです。それが部下に伝わって(自分はやっているつもりでもそれが伝わっていなければダメです)、部下も上司へ呼応していくという流れです(返報性の原理)。

 事実、日頃から部下との良質なコミュケーションを実践できている上司は、自分のことや考えていることなどを部下に対して日常的に自己開示している傾向があります。そうした上司は、自分に関することを知ってもらうことの大事さを自然と理解し行動に移して、部下に対して関心を持ち、理解するためのコミュニケーションを日々積み重ねています。例えば、部下が何を考えているのか知りたいと思えば「率直に」聴いています。勝手な思い込みや想像で部下の内面を決めつけません。

 この他にも、自分の考えていることや指示伝達事項は「適切に伝わっているか」「理解できているか」をなど気にかける(自然と気になる)、「どのように部下と関われば、どんな環境を整えれば部下それぞれが持つ能力を存分に発揮できるか」といったことを日常的に考えて「行動に移している」のです。

 逆に、
・思い込みと決めつけで部下を理解した気になっている
・部下への関心を感じられない
・サポート姿勢や安心感を与えてくれない
・部下の仕事ぶりにしか興味がない
――このような上司と部下の間には、より良い信頼関係が築き上げられていく未来は見えません。

 ちなみに、年齢が離れた上司と部下の場合、世代ギャップから心理的距離が生まれがちですが、例えばふた回り以上も年が離れた上司と部下の間で「実は共通の趣味が釣りだと分かった」。たったこれだけのことで互いへの関心、心理的距離が一気に縮まってコミュニケーションまで劇的に変わったというエピソードは珍しくありません。そういう観点から「互いを理解する、知る」の範囲を広げていくことも重要です。

 コミュニケーション問題が指摘されているコロナ禍の今だからこそ、経営者の皆さん、現場の管理職を含めて「社内における上司と部下の信頼関係」について話し合ってみてはいかがでしょうか。

速攻活用ツールをお試しください

 今回は上司と部下との信頼関係の構築を進めるうえで役立つ、すぐ使えるツールシートを2つ用意しましたので、ぜひ、お試しください。

①TR振り返りシート
上司の立場から信頼関係(Trust Relationship)を振り返ってみるツールです。経営者の皆さんだけではなく、幹部や管理職のそれぞれの立場で考えてみていただき、結果について話し合ってみてください。

②SDシート
自己開示(Self Disclosure)の機会をつくるためのツールです。上司と部下、それぞれで記入したシートを見せ合いながら、改めてお互いを知る機会になるよう気軽な話をしてみてください。もちろん、同僚同士がお互いの理解を深めるために活用できます。ちなみに、この②のシートを実施することに部下の抵抗が強いほど、日頃のコミュニケーションに課題があるケースが多いです。

御供田 省吾(ごくでん しょうご)氏 組織営業総研 代表
御供田 省吾(ごくでん しょうご)氏
組織営業総研 代表
キーエンス入社後、自ら考案した営業手法が「現場発の売れる仕組み」として全社的に紹介されるなど、独自視点のコンサルティング営業スタイルを確立。同社の営業エリア責任者を経て、日本最大級の不動産情報サイト「HOME'S」を運営するLIFULL(旧NEXT)に入社。若手に自らが考えて行動することを習慣づけながら、独自の手法で、成長と高い成果を両立させる組織をつくり上げ、数多くの次世代マネージャーを輩出した。同社営業部門責任者を経て、人・組織の成長がクライアントの業績向上につながるよう支援をするコンサルタントとして組織営業総研を起業、現在に至る。
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