風通しの良い組織づくり。これは多くの経営者・上司が目指す組織の理想的な在り方でしょう。そして、その先に求めるのは、組織の中で日ごろから建設的なコミュニケーションが交わされ「組織の課題改善」「新しい挑戦」などが常に生まれることではないでしょうか。本コラムのテーマである「若手を生かす」という観点でも、風通しの良い組織は心理的安全性が高く、エンゲージメントを高める効果があります。今回は、風通しの良い組織をつくること、そして経営者・上司が期待する効果を生むための仕掛けについて解説します。

風通しの良い組織風土をつくるキーマンは誰か
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大事なのは心理的安全性を社員が実感できること

 経営者・上司が求める本当の組織の風通しの良さとは、互いの立場に縛られずフラットに言葉が交わされ、尊重し合える、受け止め合える状態です。こうした組織では、何気ない雑談に始まり、相手への感謝や称賛、ふと思い付いたアイデア、気づきから弱音や心配事、そして時には相手にとっての耳の痛い話や組織の課題へタブーなく言及できます。さらに率直で建設的なコミュニケーションをベースとした風土の中で、組織をより良くする様々な議論が自然発生していくことが、風通しの良い組織の先に、期待する効果でもあると思います。

 そのためには、まず個人が自分の思いや考えを発することに不安やリスクを感じることが少ないこと、つまり心理的安全性が保たれている環境が不可欠であり、次のようなことを一人ひとりが日々実感できていることが重要です。

■自分が所属する組織は、個人の意見や考えなどが尊重される組織である
■互いの立場、関係に縛られず、思うことを率直に伝え合うことを「良し」とし、率直さに欠ける関わりや沈黙は「良くない」とする価値観を共有している
■自分の発信が、誰かの承認につながったり、組織がより良く変化するきっかけになったりする
■発信内容に対してレベルが高いか低いかをお互いが気にし過ぎない
■必要な時には組織や個人に対しタブーなく発信したり、耳の痛いことを伝えたりしても互いに受け止められる信頼

 大事なのは経営者・上司が、これらを日ごろから伝えることであり、さらにその先に社員が実感できていることです。まずは、各階層でこれらを実感できているか、改めて確認してみるとよいでしょう。

上司の行動が組織風土をつくる鍵と心得る

「風通しの良い組織をつくるのは誰なのか?」

 この問いへの経営者からの回答は「社員一人ひとり」というものが多い気がしますし、正論だと思います。

「風通しの良い組織づくりがうまくいかない壁はどこあるか?」

 では、この問いについてはどうでしょうか。いろいろな組織を見てきて強く感じるのは、結局、一番影響するのは上司の振る舞いであり、それが組織風土を方向付けるということです。特に若手には、経営者や幹部と上司、上司と先輩といった周囲の関係性に感じたものが、その組織の不文律として刷り込まれてしまうので、良くも悪くも経営者を含めた上司の影響が大きいと思って間違いありません。

 実際、風通しに課題がある組織では、部下から上司に対する次のような声が聞かれます。

●部下に対する上司の傾聴姿勢を感じられない
●部下の意見、発信に対して、全面的にではないにしろ否定的な反応が強く出がち
●課題点や少し耳の痛いことを発信しても、上司や組織に変える姿勢が感じられない
●日ごろから様々なことに対して上司からの要求レベルが高すぎる
●部署違いの上司同士が互いに忖度(そんたく)や遠慮をして率直に関わっていない

 このような声の先にある部下の本音は、
「結局、言ったところで聞く耳持たないじゃないですか」
「言ったところで結局変わらない(変えてこなかった)じゃないですか」
「レベルが低いと思われる(批判される)から、要らぬことは言うまい」

──こんな感じになり、期待されるような率直な発信を諦めていく。当然、それを見たその部下の下のさらに若手たちも、先輩たちのそうした空気に引っ張られてしまいます。

 一方で、当事者の上司に実態をヒアリングすると、「ちゃんとできている」「意識しているのでうちは(私は)大丈夫だと思う」という回答が多いのも事実です。この「できているつもり」という間違った自己評価は、組織マネジメントでは一番気をつけたいリスクの1つですし、気になる場合は、先ほどの心理的安全性に関わるポイントと同じく実態を確認してみることをお勧めします。

 コラム後半では少しケーススタディー的に見ていきましょう。