自社の将来を担う若手を育成する上で、若手が所属する組織(会社や部署)に「居場所を見つけているか」「居場所があると感じられるか」は非常に重要です。これは、組織へのエンゲージメントを強め、ここで頑張っていこうという意識を固めるために不可欠であり、心理を安定させる要素でもあります。今回は「居場所」というキーワードから、経営者・上司にとっての、若手を生かす組織づくりについて解説していきます。

若手の組織エンゲージメント強化の鍵は「居場所」
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若手は組織に「今の」居場所を見つけられているか

 会社での居場所とは、会社に行けば自分のデスクが設置されていて、そこが居場所になっているということもありますが、本コラムで注目するのは「組織での役割や人間関係」といった心理的な意味での「自分の居場所」です。特に、コロナ禍でやむなく在宅ワークが続いて、職場で上司や先輩と時間を共にする経験値が少ない若手にとって、こうした「組織での役割や人間関係」という心理的意味合いの重要性はますます高まっていくと考えられます。そこで経営者・上司がどう関わっていけるかが、より大切になります。

 本コラムの第9回で、新人、若手が感じている典型的な不安として「自分は役に立っているのか? 違うならここにいてよいのか?」というものがあると解説しました。この「ここに(組織の一員として)いてよいのか?」という不安、迷いは、まさに組織の中に「自分の居場所」があると感じられているかどうかを表すもの。上司としてこの不安を取り除くことが、若手育成を成功させる上で大事です。

 若手が「自分はここにいてもよいのだ」と感じられることとは、言い換えれば、「自分は関心を持ってもらえる対象である」と感じられるかがまずあり、その先に「自分は大事にされている」「自分は必要とされている」と感じられることです。

 「自分は関心を持ってもらえる対象である」ことを新人に示すため、頻繁に声を掛けるようにしている、在宅ワークでもこまめにコンタクトを取るようにしているという上司は多いと思います。ただ、これが「管理(監視)されている」と感じさせてしまっては意味がありません。この点には注意したいところです。

 また、声掛けを意識することは良いことなのですが、それが必ずしも居場所を感じられることにつながるとは言えません。例えば人間関係では、日常的に普通に会話もするし同じ場所にいるけれど、どこか人の輪に入り切れていない感じがある、疎外感を感じているという人も結構います。新しく加わった人や共有・共感できる経験が少ない人はこのように感じやすく、まさしく若手がこれに近いわけです。

 ですから、ただ声掛けを意識するにとどまらず、その先にある若手が遠慮や疎外感なく気持ちの上でもチームの輪に入れているかを意識してコミュニケーションを心掛けてみてください。こうした点では、本コラム第2回で詳しく解説している「部下をよく観る」は、部下に上司や周囲からの関心を体感させるコミュニケーションを促進するコツなので、あらためてご一読ください。

 このような上司・先輩の関わりが実践されて、若手が「気にかけてもらえている」と感じていれば、感謝の思いとともに「自分は関心を持ってもらえる対象である」という実感の先にある「自分は大事にされている」ことを感じてもらえるはずです。

 もう1つの「自分は必要とされている」という実感は、「自分はまだ役に立てる存在になれていない」と感じがちな若手にとってハードルが高いかもしれません。これを感じてもらうには、「あなたがこの会社(組織)に入ってくれてよかった。うれしい」と、上司がはっきりと伝えることが一番です。

 その際には、「組織の雰囲気が明るくなった」「先輩たちがいいとこ見せようと頑張っている」など、どうしてそう思うのかの理由を添えましょう。事あるごとに、こうした内容を伝えることで少しずつでも未熟な自分なりにも必要な存在になれていると実感していけるでしょう。

 若手目線でどう感じているかを意識した上司の丁寧な関わりが継続的に実践できて、それが伝われば、若手にとってその組織は「今」の自分にとっての居場所だと実感できる場になっていくはずです。それは「自分はここにいていいのだろうか」という不安からの解放であり、その安心感は若手が目の前の仕事にエネルギーを注げる良い環境を整えることになり、成長や活躍を後押しします。