まずは朝夕2回から始める
「報・連・相」は部下の義務であり、正しく行う意識と努力をすべきである。適切に実践されていないのは、部下に問題がある──。
セミナーなどで「報・連・相」がうまく機能していないと悩む人の話を伺うと、こうした考えで部下と接している人は少なくありません。ですが、「報・連・相」は「部下からしてくるもの」ではなく「上司がタイミングをつくるもの」です。そう考えた方が、部下を正しく指導できます。
いつでも声をかけるように伝えても、若い部下にとって、仕事中の上司の手を止めさせて「報・連・相」をするのは、上司が思うほど簡単ではありません。「今なら」「この時間なら」という具合に、上司が確実に「報・連・相」を聞いてくれるタイミングが分かっているほうが、圧倒的にアクションを起こしやすいのです。
タイミングをつくるのに一番簡単なのは、上司から声をかけることです。若い部下ほど、こまめにやることが効果的です。本コラム第2回で詳しく解説しているように、部下をよく見て、気になったタイミングで声をかけるのもよいでしょう。
以上のことをまず実践して部下に「報・連・相」を理解させるのを前提として、回数についてもお答えします。
冒頭で、回数だけに注目しなくてもよいと回答しましたが、最初は目安があった方がやりやすいと思いますので、アドバイスしていきます。入社間もない段階では、いろいろな業務状況の把握も含めて、朝夕2回、簡単なミーティングをすればよいでしょう。事前に設定されていると上司に話す機会が確実に担保されるので、部下は心理的にも楽になります。
時には、朝夕のタイミングを待たず、すぐに「報・連・相」すべきこともあると思います。そのタイミングの判断も、最初は定期ミーティングで指導すればよいのです。なお、私自身は仕事が立て込んで本当に「報・連・相」を受けることが難しいときは、デスクに目印を立てていました。その目印がないときは「いつでも声をかけてほしい」と伝えていました。
これらの指導で部下が「報・連・相」を問題なくできるようになれば、適切なタイミングで実施すればよいので、朝夕2回という定期実施は徐々に減らして、最終的には、なくしていけばよいでしょう。
最後に「報・連・相」を部下から引き出す工夫を紹介します。「何か聞いておくべきことはある?」「何か報告することはない?」など、ざっくりとした問いかけではうまく引き出せません。
「何か気になっていることはある?」「うまくできるか心配なことはある?」「ほかの人から何か言われたことはある?」「さっき気になる話が聞こえたけど、何かあった?」など、より具体的に質問すると、部下からの言葉を引き出しやすくなります。「聞いておくべきこと」「報告すべきこと」という言い方は、やはり部下に情報のフィルタリングを任せることになってしまいます。若い部下ほどこの問いかけには正しく応答ができません。
問いかける言葉を少し工夫するだけでも、部下から「報・連・相」を引き出しやすくなるので、ぜひ、実践してください。


組織営業総研 代表
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