広範かつ強固な海外ネットワークを持つMUFG。本コラムでは、世界各地の拠点責任者・駐在員が、現地の生情報をリポートする。第19回は、新型コロナ禍におけるシンガポールの食糧政策、飲食業や食文化に焦点を当てて現地情報を報告します。(D-Com編集部)

シンガポールで伝統的に見られるプラナガン様式の建築
シンガポールで伝統的に見られるプラナガン様式の建築
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 都市国家のシンガポール。緑は多いものの、日本人としては何かが足りないと感じてしまいます。そう田園風景です。食料の9割を輸入に依存していると聞き、コロナ禍にあってスーパーの食品売り場にある棚から商品が無くなる状況も覚悟して赴任したのですが、取り越し苦労に終わりました。

 シンガポールの食料安全保障指数は、世界トップランクであり、実に170カ国以上から輸入をしており、価格も安定していて、買いやすさで高い評価を得ているのです。近所のスーパーはいつも多くの商品があり、人々でにぎわっています。20年前にベトナムで選択できる食料品の種類が少ない生活を経験したことがありますが、それと比べると格段の差があります。

シンガポールのスーパーの食品売り場。野菜や果物から加工品まで種類は豊富
シンガポールのスーパーの食品売り場。野菜や果物から加工品まで種類は豊富
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食料自給率を30年までに30%へ 政府が本気の政策

 シンガポール政府は2019年3月に、栄養ベースでの食料自給率を30年までに30%へと引き上げる目標を公表しています。まず打ち出したのは、既存の農家、鶏卵・養殖業者の生産性向上を企図した補助金政策です。また、最近では駐車場や商業施設の屋上、屋内で野菜を栽培する動きも活発で、安全さ、クリーンさを担保する都市農業の新規格SS661を発表しました。農薬不使用という高い課題への挑戦ですが、長期的には消費者のニーズは高まりそうな予感です。

 加えて、フード&アグリテックのスタートアップを支援するエコシステムを構築しようと、資金、アクセラレーター、研究開発のみならず、環境負荷に配慮した生産や流通手法など、実に手広い施策を政府主導で推進しています。シンガポール政府系投資会社テマセク・ホールディングスは21年11月に代替タンパク質の生産規模拡大の課題解決や、アジアにおける持続可能な食品の成長を加速させることを目的とした枠組み「アジア・サステナブル・フーズ・プラットフォーム(ASFP)」の設立を発表しました。投資のみならず、事業家支援やオペレーターとしても広角に推進していくようです。この分野でのスタートアップは筆者としてはまだ黎明(れいめい)期であると捉えていますが、手厚いバックアップのもと、切れ味鋭い起業が進むこと、日系企業との協業も期待しています。