広範かつ強固な海外ネットワークを持つMUFG。本コラムでは、世界各地の拠点責任者・駐在員が、現地の生情報をリポートする。第7回は、インド・デリーだ。インド政府による新型コロナウイルス感染症への数々の対応は、独特で興味深いものがある。今回はその対応の幾つかを紹介していく。(D-Com編集部)

無秩序な交通事情も「柔軟さ」の秘訣かもしれません
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 コロナ累計感染者数は1222万人と国別で米国、ブラジルに次ぐインド。一時期感染者数が減り、「もしや収束か?」との期待感があったものの、現在は猛烈な第二波に見舞われコロナ禍の悪戦苦闘が続いています(いずれも2021年3月末時点)。

 インド政府はコロナ収束を最重要課題として今日に至るまで数々の対策を講じてきました。それらは独創的で興味深く、今回はその幾つかを紹介します。

インド政府保健・家族福祉省発表データを基に三菱UFJ銀行にて作成
インド政府保健・家族福祉省発表データを基に三菱UFJ銀行にて作成

完全ロックダウン前の予行演習

 インド政府は20年3月25日から警察、消防、食料品店、薬局、銀行などを除く一切の業務を停止する、完全ロックダウンを実施しました。その発表は実施4時間前と性急なものでしたが、その3日前の日曜日に、インド全土で1日限りの外出禁止令を発令し、強烈な行動制限の導入をスムースなものとすべく「予行演習」を行いました。

 ワクチン接種開始前にも「ダミーワクチン」を使い、配送から指定病院での接種までのドライランを繰り返すことで入念な準備を実施しています。

酒にコロナ税

 完全ロックダウンは段階的に解除され、20年5月上旬には酒類の販売も再開されました。インド人の飲酒率はあまり高くないのですが、世界のウイスキーの半分弱はインドで消費されており、酒店閉鎖は飲む人には非常につらい期間でした。約40日ぶりの酒店再開と同時に人波が押し寄せ、感染対策維持が困難になりました。そこでデリー特別州など幾つかの州は感染対策とコロナで減った税収の穴埋めを狙い、酒類に対する「コロナ特別税」を導入。デリーの特別税は70%と非常に高いものでしたが、これも1カ月ほどで廃止されました。

IT技術の駆使

 インドのコロナ接触追跡アプリ「Aarogya Setu(サンスクリット語で“疫病からの開放への架け橋”の意)」は、ロックダウン開始から約1週間後の20年4月2日にリリース。僅か13日間で5000万ダウンロードを達成し、人気アプリ「ポケモンGO」の世界最速記録を塗り替えました。開発の速さと半ば強制による普及の速さは、目を見張るものがあります。現在も私がオフィス棟に入る際には、このアプリの緑色表示(「あなたは安全」の表示)が条件です。

 ワクチン接種に関しても「Co-WIN」というアプリを開発し、インドの「マイナンバー」に当たる国民個人情報とひも付けて、予約、接種回数などをIT管理し、国全体の接種進捗状況やワクチン在庫などを見える化。更にはデジタル接種証明書を発行し、交通機関や飲食店利用の際に提示できる仕組みになっています。

観光名所タージマハールは通常であれば常に「密」です
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