7月終盤から8月頭にかけて、ベースロード電源(BL)市場の初めての入札が行われる。政府が電力市場改革の柱と位置づけてきた新市場の1つだ。

 だが、恩恵を受けるはずの新電力側は盛り上りを欠く。それどころか、入札まで1カ月余りのこの時期になっても疑問や不安の声が絶えない。

 BL市場の創設は、これまで大手電力が囲い込んできた大型水力、原子力、石炭火力といった安価なベース電源を新電力に開放することが目的だ。「電源アクセス環境のイコールフッティング(公平性)の実現」が政府の目指してきたところだ。

満席だったベースロード電源市場説明会

 だが、ある中堅新電力の幹部は「7月の入札には参加しないかもしれない」とこぼす。

 6月12日、日本卸電力取引所(JEPX)が東京・田町のオフィスビル会場で説明会を開き、ここで初めて取引実務が公になった。

 この新電力幹部が困惑したのは預託金だ。

 BL市場の今回の入札は2020年4月~21年3月の1年間、一定量の継続的な受け渡しを決める。買い手は季節や時間帯に関わらず変動のないベースロードとして利用するのが決まりだ。2020年度分の入札は7月、9月、11月の3回実施されることになっている。

 預託金の金額は約定した買い代金総額の3%。3回の入札機会のそれぞれの約定日の翌日から、受け渡しが終了する2021年3月まで、買い手は総額の3%をJEPXに預託するというルールだ。3%とはいえ、1年分にかかってくるためそれなりに金額は張ってくる。

 約定価格や約定量でも負担額は当然変わってくるが、「1000kWを10円/kWhで落札したとすれば262万8000円」(JEPX)だ。中堅であっても1万kW程度を必要とするケースはあると見られ、そうなれば10倍の2628万円になる。これを8月頭に約定したとしたら、その翌日から2021年3月末までの約20カ月間、購入代金とは別に預け入れなければならない。

 「3%が法外とは言わないが、預託金がネックでBL市場に参加できない新電力も出てくるだろう」(市場関係者)。

 日々の資金繰りに奔走する中堅・中小クラスの新電力にとって、決して軽い負担とは言えないだろう。しかも、7月の入札に参加しようとしたら、すぐにも資金を調達する必要がある。先の新電力幹部は、既にあきらめ顔だ。

「期待しない」が半数

 預託金は買い手企業の倒産や不払いリスクに備え、売り手企業の収入を保障するための原資になる。自治体のごみ発電や新電力同士の相対取引でも求められるケースはある。ただ、金額はゼロ円から購入代金の2割程度までとケースによってまちまち。中堅・中小クラスでは預託金額も取引を選ぶ際の重要な要素になる。

 BL市場は新電力のベース電源へのアクセスを改善するための仕組みだ。預託金が過度なハードルとなるようだと競争促進の政策目的に逆行しかねない。「3%」「(最長)20カ月」が適切かどうかは、今回の入札結果などを踏まえ、検証が必要だろう。

 BL市場本体の方はどうなのか。

 新電力を中心に小売電気事業者約60社が参加する会員組織「日経エネルギーNextビジネス会議」。5月に開いた定例会合で参加事業者に「BL市場をどう評価するか」を聞いた。

 結果は「大いに期待する」(5%)、「期待する」(8%)はわずかで、「ほとんど期待していない」(30%)が最も多く、「あまり期待していない」(20%)を合わせるとネガティブな見方が半数を占めた。

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