2019年はいくつもの大きな自然災害と深刻な停電被害が記憶される1年となった。新電力などが集まる日経エネルギーNextビジネス会議は、「自然災害とマイクログリッド」をテーマに議論。政府も配電事業への新規参入の検討を始める。新たな電力ビジネスの可能性が見えてきた。

 「一帯が暗闇に包まれる中、明かりが灯り、スマホの充電や温泉施設の利用に大勢の住民が集まりました」。新電力パシフィックパワー(東京都千代田区)の合津美智子副社長が“あの日”、道の駅「むつざわ つどいの郷」で目にした光景を振り返った。

台風15号による大規模停電を免れたCHIBAむつざわエナジーについて話す合津美智子・パシフィックパワー副社長

 台風15号で千葉県を中心に大規模停電が発生した9月9日の夜。千葉県睦沢町が整備した「むつざわスマートウェルネスタウン」の33戸の町営住宅と中核施設「つどいの郷」だけは電気が使えた。太陽光や地元産出の天然ガスで自家発電した電力を、自前の地中線(自営線)で供給するマイクログリッドがこの夜、機能したのである。

 11月25日、小売電気事業者の会員組織「日経エネルギーNextビジネス会議」は、「自然災害とマイクログリッド」をテーマに議論した。

 9月の千葉県で起きた大規模かつ長期の停電は、自然災害の驚異を改めて見せつけた。その中で、エネルギーの視点から防災拠点や災害に強い街づくりのヒントを示してくれたのが睦沢町の事例だったと言えるだろう。

 パシフィックパワーは日経エネルギーNextビジネス会議の会員企業で、自治体新電力を全国で展開する。むつざわスマートウェルネスタウンでマイクログリッドを運営する「CHIBAむつざわエナジー」は同社のグループ企業の1つだ。合津氏にマイクログリッドの実像を披露してもらった。

 合津氏によるとここ数年、マイクログリッド事業を支援する国の補助金が増えている。国が支援する理由の第一に挙げられるのが、低炭素化の推進母体としてである。マイクログリッドは分散電源である太陽光などの再生可能エネルギーが発電の大きな要素になる。

 そして近年、国でも注目度を高めているのが災害に強いエネルギーシステムとしてのマイクログリッドである。

防災対策とお金の地域循環

 CHIBAむつざわエナジーは資本金900万円のうち過半を千葉県睦沢町が出資し、パシフィックパワーが2割弱、残りを睦沢町商工会、千葉銀行、国産天然ガスを生産・供給する合同資源など地元企業が請け負った。いわゆる自治体新電力である。

 千葉県房総丘陵北東部に位置する睦沢町は、国内天然ガスの産地である南関東ガス田と接し、隣接する長南町が運営する公営都市ガス「長南町ガス」の供給地域になっている。町は地元ガスを使った電力の地産地消を目指す意向も持っていたが、送電線に空きがないエリアで、発電機を稼働させても余剰電力を系統につなぎ込むことができないという制約があった。

 このことが系統から分離可能なマイクログリッド構想につながった。災害に強いマイクログリッドを構成することで、系統の停電リスクからも切り離される。自営線はすべて地中化した。ガスは地震に強い中圧管で供給される。

むつざわスマートウェルネスタウン
手前が道の駅、奥に町営住宅がある(出所:パシフィックパワー)

 温浴施設やレストランを併設した道の駅は、普段は住民らの集いの場であり、緊急時には防災拠点として機能する。

 CHIBAむつざわエナジーが装備するエネルギーシステムは80kWのガスコジェネ2台と太陽光発電20kW、太陽熱温水器(37kW相当)など。道の駅と町営住宅に電気と熱を供給する。

 自営線で構成するマイクログリッドは、自営線建設にかかる初期費用の負担がネックになる。その分は託送料金の負担回避で回収することになるが、このケースの場合で「15年かかる」(合津氏)という。中小規模の民間事業者では厳しいところだろう。

 その点は「国の補助金をうまく活用することがポイント。加えて、今回は町からも補助金を受けた。町の補助金は防災強化のメリットと収益の地元還元が前提になる」と合津氏は話す。事業を成立させるには地元自治体や地元企業との密接な連携が鍵を握るという。

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