政府は災害時の電力需給ひっ迫を受け、計画停電を発令した際のインバランス料金をこの7月から200円/kWhとすることを決めた。その際は卸電力市場が高騰し、小売電気事業者は今の料金のままでは仕入れ値と大きな逆ざやに見舞われる可能性が高い。経営を揺るがしかねない災害時の料金対策が喫緊の課題に浮上してきた。

(Adobe stock)

 マスクや消毒液が手に入らない。政府は3月、これに乗じて小売業者から購入した製品をネットなどで高値転売する行為を規制した。マスクは国内企業も製造に乗り出しており、徐々に出回るようになると期待される。その際、販売価格はどうなるのか。平時と変わらないのか、高値だとしたらいくらまで許容されるのか。

 今後、災害時に電気料金が高くなるとしたら、需要家はそれを許容できるだろうか。電気料金が時によって高くなることを需要家に説明するのは難題だ。だが、災害時の料金に関して電気供給約款(小売約款)の改定を検討する小売電気事業者が今後、増えてきそうだ。

 きっかけは3月27日に「書面開催」 された電力・ガス基本政策小委員会。委員らが一堂に集まるのを避け、政府案に対する各委員の意見を書面で集める異例の形式で開催されたこの場で、7月から計画停電発令時のインバランス料金を200円/kWhとする政府案が了承された。

 これにより今夏以降、計画停電時は高額なインバランス料金に引っ張られ、前日スポット市場や時間前市場で200円/kWhまでの高値が付く可能性がある。「いま、市場価格やインバランス料金で200円が付く状況が長時間発生したら破綻する新電力が出かねない」と新電力幹部は今回の決定に危機感を募らせる。

 ここまでの経緯を簡単に振り返る。電力・ガス取引監視等委員会は需給調整市場が新たに立ち上がることを受け、「2022年以降のインバランス料金」の見直しを進めてきた。その一環として需給ひっ迫時のインバランス料金を人為的に高値補正する仕組みの導入を2019年12月までに決めた。

 それは全国予備率が3%を下回る需給ひっ迫時と、政府が計画停電を発令したときは600円/kWhとするというものだ(「計画停電でインバランス料金600円の深刻度」)。ただ、大きな負担に反発を強めた新電力などを配慮する形で、2022年度から23年度までを暫定期間とし、2年間は200円/kWhとすることで決着した。

 高値補正は需給ひっ迫時にインバランス発生がもたらす停電リスクなどのコスト増を反映させたもので、英国やドイツ、米国テキサス州などでも同様の仕組みを入れている。600円/kWhはひっ迫時の需給調整で必要になる追加的なDR(需要応答)コストから算出したもので、海外の水準とも大きな違いはない。ひっ迫時にあっても電気のコストを事業者が負担する理屈は否定し切れるものでもない。

 ところが、事態は再び紛糾する。監視委員会が「2022年以降のインバランス料金」を決めた直後、資源エネルギー庁は災害時対応として、今年7月から計画停電時はインバランス料金200円/kWhを適用する案を提示してきた。

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