非効率な石炭火力をフェードアウトする――。梶山弘志・経済産業相の突然の表明は、「100基を休廃止へ」と各紙が報じたことと相まって、国内外に強烈なインパクトを与えた。石炭火力を「聖域」としてきた日本がフェードアウト(段階的な消滅)することなど本当にできるのか。それは人知れず使われている「発電効率アップのトリック」を排除できるかにかかっている。

(出所:Adobe stock)

「100基を休廃止」の衝撃

 「脱炭素社会の実現を目指すために(中略)、非効率な石炭火力のフェードアウトを確実なものにする」。7月3日に梶山経産相が示した方針は、大きな驚きもって世界に伝えられた。

 経産相は具体的な削減数を口にしなかったものの、事務方が配布した資料には「非効率石炭火力による発電をできる限りゼロに」と明記してあり、「石炭火力の全発電量の半分、140基中114基が対象」との具体的な数字も読み取れる。新聞各紙も「100基を休廃止」とほぼ横並びで掲載し、「ついに日本も重い腰を上げた」との印象が広がっていった。

 日本は電源構成に占める石炭火力の依存度が32%と高く、原子力発電に代わる電源として石炭火力を特別視してきた経緯がある。そのため世界から「石炭中毒」とやゆされ、2016年に発効した気候変動対策の国際的枠組み「パリ協定」以後、常に批判にさらされてきた。

 そんな日本、特に石炭火力を強力に推進し、脱炭素の流れに逆行する政策をとり続けてきた経産省が方針転換したことに、驚きに似た称賛の声が沸いた。

「非効率をできる限りゼロに」「140基中114基が非効率」と明記されている
図1●非効率石炭の割合と基数 (出所:資源エネルギー庁「第26回電力・ガス基本政策小委員会資料」2020年7月13日)

実は決定事項だった

 経産相が公の場で、これだけ明確に削減方針を公の場で口にするのは初めてのことだが、非効率石炭火力の削減方針は今に始まったわけではない。

 2018年に改訂した第5次エネルギー基本計画には「非効率石炭のフェードアウトに取り組む」と既に明記していた。だが、これまで具体的な削減手法の検討はおろか、この記載があたかもなかったかのような扱いを続けてきたのだ。

 これまで放置していた石炭火力問題にメスを入れたのは、間違いなく梶山経産相だ。その梶山氏は、昨年10月の経産相就任直後に「石炭火力など化石燃料の発電所は選択肢として残していきたい」と発言。12月の国連気候変動枠組み条約第25回締約国会議(COP25)で、非政府組織(NGO)らが気候変動に後ろ向きな国に贈る不名誉な賞「化石賞」に、日本が選出される理由を作ってしまった。

 この時以来、梶山経産相は気候変動対策を軽視する「守旧派」のレッテルを貼られた。実態はともかく、派手なパフォーマンスを繰り返す小泉進次郎環境相と対照的に映ってしまったのだ。

 ある官庁の関係者は「これを機に梶山経産相は勉強を始めて、大臣自らが陣頭指揮をとって石炭火力の削減に向けて動いた」と明かす。「ぐずぐずしているエネ庁の対応にいら立ちを見せることもあった」という。

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