「節電」の2文字を巡り、調整は難航

 国民に節電のお願いすらできない中、電力需給は深刻な状況が続いた。痺れを切らした電気事業連合会は1月10日の20時過ぎに「電力の需給状況と節電へのご協力のお願いについて」というニュースリリースを公表。一般送配電事業者各社も同様のお願いをWebサイトに掲載した。

 ある電力関係者はこう明かす。「電事連は1月10日午後にも会見し、節電のお願いをする方針だった。しかし、経産省との文言調整に相当の時間を要した。経産省が『節電』という文言を入れることに難色を示していたからだ。さすがの電事連もそこは譲れないと調整を続け、夜になってようやくリリースを出した」。

 だが、リリースタイトルにこそ「節電へのご協力のお願い」と記載してあるものの、中身には節電の二文字はなく、「電気の効率的な使用にご協力いただきますようお願いいたします」と書くにとどまっている。

九州電力エリアは1月10日も電力需給が逼迫。一時、使用率が100%を示した。
(出所:九州電力送配電)

 1月10日は西日本の電力不足は非常に深刻な状況だった。同日夕方には、九州電力や中国電力で電力の供給量に対する使用量の割合が95%を超えた。九州電力送配電の「でんき予報」にいたっては、一時、100%の数字を示した。電力の供給量のすべてを使用している状態という意味だ。このバランスが崩れれば停電してしまう。1月12日は東日本が危険水域だと言われる。

 電力の需給逼迫が続く中、日本卸電力取引所(JEPX)のスポット価格は、過去最高値を連日更新している。JEPXの高騰は12月後半に始まった。(「年明けも続く?長引く電力市場の異様な高騰」

 1月11日受け渡しのシステムプライス(24時間全国平均)がついに117.30円/kWhに達した。1日の最高値は190円/kWhという未曾有の金額だ。卸電力市場からの電力調達費用は急増。新電力はもちろん、大手電力の新電力子会社なども深刻なダメージを受けている。

 東日本大震災によって東京電力・福島第1原子力発電所事故が発生した時の電力不足。そして、北海道胆振東部地震が北海道電力・苫東厚真火力発電所至近で発生し、北海道全域がブラックアウトした時。今、これらに匹敵する電力危機に陥っているにも関わらず、その事実すら国民には伝わっていない。

 今回の電力危機は、燃料であるLNGの不足によるものなので、時間帯を問わず少しずつでも使用電力量を減らし、燃料を温存することが重要だ。夏の電力需要のピーク時などにありがちな「発電設備が足りない」という場合は、ピーク時間帯のみ節電すれば良いが、今回はそうではない点も広く伝えるべきだろう。

 「この寒波の中で停電してしまったら、それこそ命に関わるのに」。電力会社幹部の言葉を政府には重く受け止めてもらいたい。