「電力の地産地消」が新電力を追い詰める

 楽天のような大手新電力ですら、新規受付を中止する事態。いわんや資本力で大手に劣る中小新電力のダメージは、その比ではない。

 「既に債務超過に陥っている。資金調達に奔走しているが事業継続できるかわからない」「資金は今回の高騰で底を付く。この先数年は、新たなチャレンジはできないだろう」。新電力からはこんな悲痛な声が聞こえてくる。また、「1円でもいいから事業を買い取ってほしい」「事業撤退を検討しているので相談したい」という中小新電力の相談が大手新電力に寄せられている状況と聞く。

 そして今後、影響が顕在化しそうなのが、電力の地産地消をうたう地域新電力や自治体が出資する自治体新電力だ。秋田県鹿角市などが出資する「かづのパワー」は、既に事業休止を表明した。

 なぜ、地産地消が新電力を追い詰めることになったのか。そこには、FIT(固定価格買取制度)を活用した電源の存在がある。

FIT電源からの調達費用は「前月の10倍」

 現在、日本に存在する再エネ電源のほとんどがFITを利用している。自治体新電力や地域新電力が、エネルギーの地産地消を標榜した場合、地元のFIT電源から電力を調達するのは自然の流れだ。

 だが、FIT電源による電力の価格は、制度上、市場価格を適用するルールになっている、これは「FIT特定卸供給」と呼ぶスキームによるものだ。FIT電源で発電した電力は、一旦、地域の一般送配電事業者が買い取り、これを新電力が市場価格で送配電事業者から買う。

 ある自治体新電力関係者は、「12月中旬から1月中旬のFIT電源からの調達分の請求書が来たが、総額は前月の10倍だった」と明かす。

 再エネ電源の発電量は天候などによって変動する。こうした理由もあって、FIT電源からの調達は「発電した分をすべて買う」のが原則だ(電力業界用語で「出なり」と呼ぶ)。新電力側は、市場価格が高騰しても、契約中のFIT電源が発電する電力をすべて買い取るしかない。

 本来、再エネは燃料費がかからず発電コストが一定であるのが特徴だ。2050年に向けて再エネを増やして脱炭素化を進めていくには、電力市場でFIT電源を含めた再エネをどう取り扱うが重要になる。FIT特定卸供給の市場価格連動が政策目標に合致しているのかどうか、改めて検討する必要があるだろう。

 自治体新電力や地域新電力は、地域の脱炭素化を進める担い手となっているケースが多く、自治体によっては「地球温暖化対策実行計画」にその役割を明記しているケースもある。今回の高騰でこうした新電力が相次いで電気事業から撤退すると、地域の脱炭素化の推進は停滞してしまうだろう。