先物取引や相対取引の活性化は卸電力市場の機能や信頼性を高めるうえで重要な意味を持つ。それには市場参加者自身の努力も欠かせない。電気事業者が先物取引や相対取引を戦略的に活用するのを手助けするフォワードカーブの作成法を解説する。

(Adobe Stock)

 卸電力市場において、先物取引と相対取引の価格が収れんし始めている。そこで前回のJEPX便りでは、これまでの「モデル・フォワードカーブ」ではなく、取引市場で実際に観測できる約定価格から将来取引のための適正な現在価格を推定する「マーケット・フォワードカーブ」の作成に取り組む必要性を説いた(「『容量市場の前に先渡・先物市場を拡充』は正しい」参照)。

 今回は具体的な作り方を紹介したい。相対市場や先物市場の価格水準から市場取引が成立している「Market Trading Points」を探り、それらに整合的な「30分コマごとのフォワードカーブ」を作成する手法である。

 「30分コマ」は言うまでもなく、スポット市場(前日市場)や時間前市場における取引単位だ。いわゆる現物は、1日48コマの時間帯ごとに価格が形成される。

 これに対して先物市場は、TOCOM(東京商品取引所)の場合、全国を「東エリア」と「西エリア」の2エリアに分けて、それぞれ「ベースロード電力(昼夜合わせた24時間対象)」と「日中ロード電力(8~22時)」という1日を2種類の時間帯に分けた2商品について、月ごとに期限を切った14カ月先までの先物を取引できる仕組みになっている。

 2020年12月時点で取引できるのは、「2020年12月限月」から「2021年2月限月」までだ。スポット市場における現物市場は、30分コマで1日48コマの取引が成立する。一方で、先物市場では将来取引の現在価格を対象に取引されるわけだが、1日を分ける時間帯としては2つの区分(商品)しかない。その上、それぞれ1つの値しかない点は現物市場と大きく異なる。

なぜ、「30分コマごと」なのか

 相対取引は当事者同士が合意すればどんな商品形態も取引は可能だ。かつては向こう1年程度の長期取引が主流だったが、ブローカー(仲介事業者)の登場などにより、現在では季節単位の期間や平日と休日を分けたより細かな取引が行われるようになった。それでも30コマ単位の取引はまだ少ない。

 フォワードカーブは先の取引に関する現在価格の目安である。では、なぜ、現物市場の商品単位に合わせた「30分コマごとのフォワードカーブ」の作成をここでは推奨しようとしているのか(実際、これまで国内で紹介されてきた電力のモデル・フォワードカーブは必ずしも30分コマごとではなかった)。疑問を抱かれる読者も少なくないと思われるので、この点について少し説明しておきたい。

 金融市場においても、Market Trading Pointsは1週間、1カ月、3カ月、6カ月、12カ月といった限られた定型の期間で扱われている。それらのポイントでの市場価格情報を尊重しつつ、定型期間の任意の中間点の市場価格情報を推計して、ポジション管理やトレーディング、商品開発に応用している。

 ただ、金融の世界においても価格を推計する粒度はせいぜい1日単位である。それは、例えば金利という商品であれば、1日単位で何かに投資したり、資金を使ったりする機会費用を表現する、あるいは他の利用機会と裁定したりする商品だからである。通常の金利ビジネスの世界では、「1日」が何かのために資金を動かしたり寝かしたりする価値の表現単位であり、金利ビジネスの最小単位ということになる。

 日本における電力の場合、同様の考え方を援用すると、そういった時間の最小単位が30分コマになる、電気に関わる様々な現象が30分単位で認識され、管理されている。従って、そういった最小単位で市場情報を展開しておけば、あらゆる電力ビジネスに共通で整合性のある市場価格水準の表現が可能になる。実際、海外の大手電力では、フォワードカーブもエリアの最小時間単位で表現するのが常識になっている。その具体的な効用はこの記事の最後でまとめて解説したい。

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