2020年12月から2021年1月にかけての市場高騰をきっかけに、現行の市場制度を見直す機運が高まっている。市場に潜む問題は複合的だが、今一度、根本から洗い出していく必要がありそうだ。今回は卸電力市場における「入札問題」を考える。今冬の高騰を招いた背景にある当局によるインバランス指導と、常態化している大手電力によるアイスバーグ取引について取り上げる。

 2020年12月半ばから始まった高騰相場の要因の1つに、新電力の高値買いが挙がっている。

 電力広域的運営推進機関は、かねてインバランスを出す新電力に対して同時同量を達成する手段を尽くすよう指導方針を示していた。この指導は、2017年夏に生じた価格高騰を機に強まり、広く関係者に浸透した(「電力市場の連日高騰に“制裁強化”原因説」参照)。

 1月19日に開かれた電力・ガス基本政策小委員会で今冬の価格高騰に関連して、委員の松村敏弘東京大学教授は「2016年に(新電力の)供給力確保義務を議論したときは、インバランス料金が本来のコストに比べて安すぎる状況で、インバランスを出す事業者を放置するのが問題だった。今回はインバランス料金が十分高い状況であり、その上で、広域機関が供給力確保義務を事業者に強く言うのは適切なのか?」と意見を述べた。

 ほかの委員からも、広域機関が新電力に対して「供給力確保義務」や「計画値の整合性」を強調しすぎるのは問題だという趣旨の発言が続いた。

「常態的にインバラン発生には制裁措置も視野」
図1●2016年に資源エネルギー庁が提示した資料

買い札をつり上げた当局の同時同量順守指導

 2017年の夏は、前日スポット市場が高騰しても、当日のインバランス料金は安かったケースが多かった。そのため、市場価格が高いときにはあえて買わず、当日に不足インバランスを出す事業者が増えた。こうした事態の是正を広域機関が求めたのは、同時同量の理念に適うものだったと言える。

 しかし、今回の高騰では卸電力市場への売り玉が十分に投入されない中で、同時同量の順守が一部の新電力に強く求められた。

 電源調達手段が限られる新電力としては、スポット市場を使わざるを得ない。だが、売り玉が足りないため、買い指値が約定しない事態が起きる。翌日は買い落としを避けるため、より高値で買い指値をする。玉切れが長く続くと、この悪循環が回転し始め、市場価格のつり上げをもたらしてしまう。

 今回、2016~17年と違ったのは、電力・ガス取引監視等委員会がこのメカニズムをわかりやすい形で公表してくれたことだ(図2)。図2の資料は「供給量の不足で売り切れが発生することにより、買い入札価格により約定価格が決定されている」と解説している。

今冬は「スパイラル的な高騰が発生」
図2●スポット市場価格の決め方(出所:電力・ガス取引監視等委員会)

 つまり、広域機関や一般送配電事業者の要請に応えようとして買い札を入れる新電力が、不本意にも日を追って買い指値を釣り上げていく過程が目に見える形で示された。

 図2の垂直に立った供給曲線はその時点で売り札がなくなったことを示している。需要曲線とは交差することなく、売り切れ時点の買い入札価格だけで約定価格が決まる。これがJEPXの約定ルールだ。

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