2020年12月から2021年1月にかけての市場高騰をきっかけに、現行の市場制度を見直す機運が高まっている。市場に潜む問題は複合的だが、今一度、根本から洗い出していく必要がありそうだ。今回は「市場運営の問題」として、卸電力市場を介した調整力確保の問題を取り上げる。国内市場特有の制度が市場の混乱に拍車をかけた可能性がある。

 電力・ガス取引監視等委員会は3月2日の第57回制度設計専門会合で、今冬の電力不足の際、緊急時対応として一般送配電事業者がスポット市場などの卸電力市場から調整力を調達していたことが報告された。

 明らかになった一般送配電事業者の行為は、新電力をはじめとする市場関係者にとって十分には事前に知らされていないものだった。にもかかわらず、監視委員会は会合の場で「問題なし」との評価を下した。

 しかし、監視委員会が言うほど簡単に割り切っていい問題ではない。市場運営の根幹が問われるものだ。

一般送配電事業者がJEPXで調整力を調達していた

 1つは、今冬の市場高騰時に一部の一般送配電事業者が「電源Ⅱ」の「事前予約」を行ったという問題だ。

 電源Ⅱは一般送配電事業者が需給調整のための調整力に利用する電源の一種である。調整力公募を通してあらかじめ確保された需給バランス調整力を「電源Ⅰ」、DR(デマンドレスポンス)などを含む厳気象対応調整力を「電源Ⅰ’(イチダッシュ)」と呼ぶのに対して、電源Ⅱは小売り向けに市場投入された電源の余剰から調整力として一般送配電事業者が調達する電源をいう。

 電源ⅠとⅠ’は需給調整専用で、制度的にもスポット市場とは切り離されている。だが、電源Ⅱはスポット市場投入後に余剰として残った供給力用電源を調整力として使ってもいいというものである。当然、スポット市場への投入が優先されなければならない。電源Ⅱは調整力公募に応じなかったか、落札されなかった電源である。

 それを調整力用として一般送配電事業者が大手電力の発電部門(または小売部門)に「事前予約」していたというのである。

 監視委員会の資料によると、実際の事前予約のタイミングとしては、スポット市場前とスポット市場後の2つのケースがあった(図1)。

一般送配電事業者が調整力として「電源Ⅱ」を事前予約していた
図1●高騰時における一般送配電事業者の取り組み(出所:電力・ガス取引監視等委員会)

少量なら市場に影響がない?

 スポット市場前の予約は、四国電力送配電が12月16日および17日分で実施していた。

 「スポット市場前の予約」は、一定量の電源Ⅱをスポット市場に投入せずに残しておくよう域内の大手電力に要請していたことを意味する。

 だが、監視委員会はこの四国送配電の行為に対して「スポット市場の約定総量に占める予約量の割合は多くても0.4%程度であり、市場取引への影響は限定的であったものと考えられる」との評価を下した。

 「少量だったから問題ない」と読める内容だ。だが、12月16、17日分のスポット市場は玉切れを起こした時間帯もあり、50円/kWhを上回った時間帯も少なくない。

 そもそもスポット市場の前に予約しておいて、「スポット市場に影響しない」などと言い切ってしまうことが適切なのだろうか。これは少量だったから許されるといった話ではなく、ルールの根幹に触れる問題ではないのか。

 さらに12月15日に四国送配電が、12月21日には中部電力パワーグリッドが「スポット市場後」に事前予約を行っている。この場合は、スポット市場には投入されたが、時間前市場には投入しないで調整力に回すことを要請したということになる。

 これについて監視委員会は「スポット市場後であったことから、スポット市場への影響はなかったと考えられる」としている。あたかも時間前市場への影響は無視したかのような言いようだ。

 だが、スポット市場で買えなかった小売電気事業者が、時間前市場ではさらに買いにくくなっていた可能性がある。そもそも普段から時間前市場は使い勝手が悪く、今冬はスポット市場以上に流動性に乏しかった。

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