昨冬の相場高騰が象徴するように日本の電力市場には課題が山積している。問題の一つひとつについてはこの半年にわたり、このコラムでも取り上げてきた。だが、その多くは1つの問題に収れんする。自由化の理念のもとで市場参加者や需要家を正しい意味で守護する「番人」が不在であることだ。

(出所:123RF)

 2020年度冬の市場高騰や初回容量市場、そして非化石価値取引市場の分割など、この1年弱の間に電力市場(制度)を巡る大きな問題が立て続けに噴出した。

 一見すると別々の問題のように見える。だが、それらには根っこというべき共通の問題が潜んでいると当研究会は考える。それは「市場の運営責任」である。

 3年半前の2018年1月、当コラムで「『電力の番人』の登場を望む」という記事を掲載した。

 その中で、市場における番人の機能とその必要性を訴えた。その際、市場価格におけるシグナル機能と日本銀行の例を引きつつ、番人の役割を次のように述べた。

 「市場価格とは何かを考えたとき、日本銀行の取り組みなどは1つの参考になる。インフレ局面と判断されれば、日銀は円の貨幣価値が将来減少しないように円金利を上昇させる。デフレ局面では、逆に円金利を下げて、将来の財やサービスに対して円を保有する相対的価値を低下させる。あるいは、外貨に対する価値を安定化させるため、外貨との金利差や為替水準を管理する。金利や為替は自由市場で取引されるが、その中にあって日銀には円の価値を守る使命がある。日銀が『通貨の番人』と呼ばれるゆえんだ」

 「もちろん電力と通貨は異なる。通貨発行の主体でもある日銀と同様の関与が、電力で可能なわけでも適切なわけでもない。それでも、ある範囲の経済圏における生活や産業に直結する経済の基盤という点で、電力は通貨と共通する点も多い。電力の場合も、より長期的に安定した、あるべき価格が存在することで、国民生活が安定し、国際競争力のある産業が育ち、技術革新が生まれる」

どんな市場にも番人は存在するはず・・・

 これは当時の記事の引用だが、今回は番人の役割についてもう少し踏み込んで考えたい。

 市場活動にとって重要な機能や役割を担っている組織や専門家は日銀だけではない。証券取引等監視委員会や公認会計士協会(構成員としての公認会計士や監査法人を含む)を「市場の番人」にたとえる考え方もある。

 いずれも、株式や債券における発行市場や流通市場において投資家を保護することを目的としている。インサイダーや市場に大きな影響を与えうる立場を利用した不公正な振る舞いを制限する役割が番人にたとえられている。

 公正取引委員会も自らを「独占禁止法にかかわる違法行為を取り締まり、市場経済の基本ルールが守られるよう監視する『市場の番人』」と位置づけている(中学生向け独占禁止法教室資料参照)。

 特定の企業や産業が独占や寡占の状態にあり、国民が求める公正で健全な消費行動が阻害される状況に目を光らせるのが公取委の役割だ。

 証券市場でも消費市場でも適正価格を形成することの重要性が強く意識されている。そして、適正価格を形成するプロセスが安定的かつ長期にわたって維持・運営されることが期待されている。その役割を果たす機能や機関を人々は番人と呼ぶ。

 つまり、投資家(市場参加者)や国民の経済活動を守るのが番人という存在だ。特定の業種や業態の利益を守るための番人というものはいない。

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