今冬の市場高騰の原因究明と再発防止策の議論が続いています。3月24日には独立系新電力最大手のF-Powerが会社更生法を申請するなど、新電力の経営ダメージは深刻です。今回の経験を経て、新電力は何をすべきなのか。再エネ新電力の存在意義とは――。
 電力自由化や再エネ導入で日本の先を行くドイツの電力市場や再エネ政策を現場で見てきた西村健佑氏による論考です。

(出所:Adobe Stock)

 今冬のJEPXスポット市場の高騰とその後の対応は、正直なところ驚くものでした。これまでドイツで今冬の日本ほどの異常な市場高騰が起きたことはありません。ただ、市場高騰に対してのガイドラインはあらかじめ定められています。

 欧州には市場濫用についてEUが2011年に定めた「卸売エネルギー市場の健全性と透明性に関する規則」(REMIT)というルールがあります。ドイツではREMITに基づき、日本でいうと電力広域的運営推進機関のような存在の連邦ネットワーク規制庁と連邦カルテル庁が共同で設置した市場透明化機関が、平時から市場を監視しています。

 市場高騰時の対応を定めたガイドラインもREMITに基づくものです。内容は複雑なのですが、前日市場の1時間コマの市場価格が天然ガス火力発電の合成変動コストの3倍を超えた場合は、電力事業法ではなく、カルテル法から市場評価する必要があるとしています。合成変動コストは、限界費用とは厳密には異なるものですが、おおよそ似たようなコストになると考えてください。

 仮に、ガス火力の限界費用が高めに見積もって30円/kWhだとして、90円を超えたらカルテル法の観点でチェックされる可能性があるという意味です。ちなみに、独フラウンホーファー研究所の2018年の発電コスト比較によれば、ガス火力の発電コストは11~22セント/kWhです。

 限界費用の3倍を超えたら即違法というわけではありませんが、カルテル法で市場をチェックするトリガーになるというわけです。

 競争法は専門ではないのでその後の対応について断定的なことは言えませんが、聞いている範囲では、大手事業者の意図のある無しに関わらず、問題のある価格スパイクと判断されれば、速やかに是正されます。

 それ以外にも市場支配力調査が適宜、実施されています。ドイツではE.ONとの事業再編で最大の発電事業者となったRWEおよびUniper(ユニパー)が最も注視される対象ですが、これまでの調査では価格支配力を行使しえた時間はさほどないという結果が出ています。

 ドイツは容量メカニズムを採用せず、発電事業者は発電設備にかかる固定費などを市場価格のスパイクによって回収しています。こうした背景から、市場で価格支配力を行使してスパイクを人為的に起こす意図が働いていないかどうか、監視や調査によってチェックしています。

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