再び原子力発電所が停止しそうだ。原子力規制委員会が4月24日に、原発に設置を義務付けているテロ対策施設「特定重大事故等対処施設(特重)」が期限内に完成しない場合、運転停止を命じる方針を示したためだ。既に原発を運転中の九州、関西、四国の大手電力の株価は下落。格付けが引き下げられれば、資金調達が難しくなる可能性もある。

特重ショックによって再び原発が停止しそうな情勢になってきた
写真は四国電力・伊方原発。現在は稼働している(出所:PIXTA)

 原発の不稼働期間の長さと、特重施設への設備投資の負担額の大きさ。この2つが大手電力各社の収益と財務に与える影響の重大さが取り沙汰されている。

 4月24日に原子力規制委員会の特重施設の扱いについて報道がなされて以降、投資家は大手電力会社に対してネガティブな見方を強めている。特に、現在原発を運転している九州・関西・四国の3電力会社の株価は、相対的に下がり方が大きい。

 大手電力各社の特重施設の建設工事は1年以上遅れている。このままでは、東京電力・福島第1原子力発電所事故後の2013年に定められた新規制基準に従って稼働していた計9基の原発は、再度停止する可能性が高い。原発運転停止に伴う収益悪化が懸念されている。

 しかし、民間会社である電力会社が従来通りに原子力事業を継続することに関連する懸念は、足元の収益と財務の悪化にとどまらない。

 大手電力9社は1950年代初頭に、一般電気事業者という名称で設立された。それ以来、大手各社は100%民間会社でありながら、我が国のエネルギー政策を実現するために不可欠な存在であり続けてきた。

 国は大手電力各社がエネルギー政策を実行するために必要な規制環境を整え、維持してきた。いわば、「国策民営」の形態により、我が国の電気事業は遂行されてきた。

 具体的には、地域独占と総括原価方式の料金体系により、確実に事業費用を回収できる仕組みを作ることで電力会社の収益を安定させた。また、事業資金のファイナンスにおいては、電力会社に一般担保付社債の発行を認めることで、低コストでの資金調達を可能にした。

 国は政策実現のために多額の予算を投じることなく、大手電力各社に信用補完を与えるだけで、民間の資金を上手に活用して政策を遂行してきたわけだ。

 他方、地域独占の特権と一体のものとして、営業区域内の電力の安定供給義務が課されてきた。また、総括原価方式の料金規制の反面として、民間会社でありながら利益蓄積の道が閉ざされていたことには留意が必要である。

 第二次世界大戦後の復興期に始まった国策民営の電気事業は、このような仕組みによって大きな成果を挙げた。高度経済成長期に急激な伸長を続けた国内の電力需要に対して、後手に回ることなく着実な設備投資を続けて電力の安定供給を堅持し、国内経済の発展を支えてきた。

 国が提供する安定した規制環境において、民間である電力会社がしっかりと義務を果たし、「国策民営」の電気事業をうまく進めてきたと言えるだろう。

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