国内では電力システム改革のスケジュールに沿って、数多くの「電力市場」が創設される。しかし、それぞれの機能や役割について市場関係者から「評価が難しい」といった声もしばしば耳にする。市場の本質とは何か。自由化で先行する海外と比較し、自由化時代の信頼度維持や需給調整のあり方に焦点を当て、日本の電力市場の問題点に迫る。

 図1は国内で今後創設が予定されているものを含めた電力関連市場について資源エネルギー庁が整理したものである。

 電力には実際に消費する発電量(kWh、エネルギー)のほか、電源の発電能力を表す容量(kW)、需給を一致させるために稼働させる調整力(ΔkW)といった価値が複数あるとして、それぞれの価値を確保するための市場をあらたに創設する。中期の供給力を確保するための「容量市場」や、一般送配電事業者が最終的な需給調整をするための調整力を確保する「需給調整市場」などがそれだ。

国内では電力量、容量、調整力をそれぞれ取引する市場が立ち上がる
図1●電力関連市場の概念整理(出所:資源エネルギー庁)

 だが、この整理は誤解を招きやすい。図1は電力量、容量、調整力を同列に扱っているが、市場規模や価値の普遍性から中核はあくまで電力量を取引する卸電力市場で、容量市場や需給調整市場は卸電力市場を補完する役割にすぎないからだ。

海外との比較で際立つ複雑さ

 図2は、国別に実需給までの時系列に沿って電力市場の役割を整理した。

日本は市場の役割分担が複雑
図2●日本、ドイツ、米国テキサス州の電力市場比較(出所:各種資料より著者作成)

 一見して日本は多くの市場が立ち上がることが分る。これに対して、自由化で先行する米国テキサス州はきわめてシンプルである。この違いは何なのか。

 電力は生活の基盤、産業のコメであり、無くてはならない公益財である。洋の東西を問わず、電力供給に係る大原則は信頼性(Reliability)と経済性(Economy)だ。

 地域独占、垂直統合の時代では、とりわけ信頼性が重視され、大規模停電は絶対に起こさないという前提が官民ともにあった。

 自由化政策のもと新規参入者が増え、市場取引がシステムの中心となる中で、効率性や経済性の比重が高まった。これらと並立する形でいかに信頼性を確保するかが今、あらためて問われている。貯められない電気の場合、その骨格の1つが需給の一致だ。

 一般に需給一致は2段階で達成される。前段は小売電気事業者や発電事業者といった事業者単位で自社の需要計画や発電計画を実際の需要や発電に近づける「同時同量」というステップだ。これを達成するために使われるのが卸電力市場である。

 後段は卸電力市場閉場(GC:ゲートクローズ)後、実需給までの間に需給を完全に一致させる「需給調整」と呼ばれるステップだ。国内では一般送配電事業者、欧州では送電事業者、米国では独立系統運用者(ISO)といった最終的にエリアの電力の信頼性に責任を負う機関(システムオペレーター)が受け持つ。そのために必要な調整力を調達するのが需給調整市場だ(ドイツでは「バランシング市場」、米国では「アンシラリーサービス市場」と呼んでいる)。

 電力自由化で先行する欧米では、この卸電力市場と需給調整市場のあり方を見直す動きが始まっている。

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